秋吉久美子さん×下重暁子さん 語り合う「歳を取る」と「今を生きる」 大変な時代を生きる若い人たちに伝えたいこと
私の時代ですら、大学を出ても女性は就職する先がほとんどない。私は言葉に携わる仕事をしたくて、他に選択肢がないから試験を受けてNHKアナウンサーになったのよ。 つまり長い間、いろんな女たちが「私はこれをやりたい」と願いながらも道は開かれなかった。それでもおのおのが懸命にいろんなことを考えて、追い求めてきた。そういう思いが脈々と引き継がれ折り重なって今があるんですよ。それが「歴史」ですよね。 あんまり説教臭いこと言いたくないけど、若い人たちにはそれを大事にしてもらいたい。選択肢がたくさんある時代だからこそ「自分がどうしたいか」「何をやっていくか」を突き詰めて考えてほしいの。
チャンスを掴んだら、生かさないと勿体ない。チャンスをものにできたら、その先に道が開ける。力をつければ、自分のできることを発揮する場所はどこかにあるはず。 秋吉 私は、「今の子は賢いなあ」と思いますよ。しっかりしている。昔に比べて恵まれているようで、苦難の多い時代じゃないかな。 地球環境も不安定。世界で戦争が起こったことで物価高もあり、リラックスして生きられない時代に突入してしまった気がして。その中で生き抜くのは本当に大変だろうなって、同情してしまいます。
■とても大変な時代だからこそ伝えたいこと 下重 秋吉さんは「時代を背負う」女優さんでしたね。 秋吉 そういう世代だったんですよ。私が10代の頃は、社会の価値観や仕組みの中で生きていくことを拒絶するという、「選択的ドロップアウト」みたいな生き方があった。今はボヘミアン(伝統的な価値観にとらわれず自由で個性的な生き方をする人々)でさえ許されないんじゃないかな。 例えば、通いなれたビルに入るにしても通行証を忘れたら入館できないとか、義理とか人情とか恩義とか、そういうものも希薄になりつつある。その中で心を伴って生きていくっていうのは、本当に苦しいこと。とっても大変な時代だと思いますよ。