秋吉久美子さん×下重暁子さん 語り合う「歳を取る」と「今を生きる」 大変な時代を生きる若い人たちに伝えたいこと
私は誕生日を勿体つけて祝うのが好きじゃないんだけど、今年、88本の真紅のバラの花を贈ってくれた友人がいたの。自分で胸に抱えて、鹿児島から持ってきてくれて。さすがに感激しましたよ。それで、改めて考えてみたんですけれど、88年生きるのはやっぱり大変なこと。「とにかく生きてきて、偉かったな」ってしみじみ思う。 ですから、「歳取った人は、生きてきただけで偉いんだ」って思うようにしているの。どんな形であれ、生きてきたってことだけで意味がある。最近はそう思うようになりました。
秋吉 私、60代の頃は「初老のオンナ」とか言って、とぼけて楽しんでいたんですよね。でも、今は「老人新入生」になった感覚です。女性はやっぱり70歳になると、いい意味でも悪い意味でも、何かを手放した感じはしますね。 70になって、ズシンときた。整理整頓っていうんでしょうか、こざっぱりしたいという気持ちにはなってきてるんです。言い換えると、清潔感かしら? 生き方も、こざっぱりとさりげなく。洋服も上手にお洗濯して、自分自身が気持ちよく着られたらいい。みんな50、60代くらいになると焦ってくるんですよね。まだやりたいことが残っているとか、もう一度モテたいとか。
下重 私なんて80代になって初めて、本当に自分が望んでいた道が開け始めたんですよ。60代や70代で花開くのなんて、ごく当たり前のこと。ましてや、30代や40代なんて、まだまだつぼみの段階よ。 今の若い人たちは急ぎすぎてるんじゃないかな、もっと長い目で物事を見ることが大切だと思います。熟考してじっくり時間をかけてやったことはちゃんと自分に返ってくる。何年かかるかはわからないけれど、自分の意思を持ち続けなきゃ。まあ、これが大変なんですけどねえ……。
■老いを見つめられるような強さを持ちたい 秋吉 私は、「うっかり芸能界に入ってしまったがゆえに、やれなかったこと」をやっていきたいと思っていて、今5つくらい教室に通ってるんです。哲学教室とか旧約聖書を英語で読む会とか、詩吟とか。1日が40時間くらいあったらいいのにって思ってます。 でも、それは、やりたいことがいっぱいあって、時間が足りないから1日40時間欲しいという意味じゃないんです。やっぱりいろいろ面倒くさいし、かったるいなあ……なんて感じるようなった。