秋吉久美子さん×下重暁子さん 語り合う「歳を取る」と「今を生きる」 大変な時代を生きる若い人たちに伝えたいこと
以前は明け方まで本を読めましたけど、今では、夜になると目がショボショボしてくるし。だから、「40時間あれば、夜8時に本を読み出しても感覚的には夕方と一緒なのにな」なんて思ってしまうというわけ。 下重 なるほどね。私は仕事と遊び、2つともないとダメなの。歳を重ねるごとにお付き合いが増え、やりたいことも増えてきて、毎日あっという間に終わってしまう。 仕事は私にとって、姿勢を正してくれるもの。遊びは、自分を自由にしてくれるものなのね。この両輪がないと、生きていけない。仕事が忙しくてうまくいかないときは、一生懸命遊ぶ。
逆にプライベートでしんどいことがあれば、仕事に全力投球するの。それで両輪を保ってきたけど、ふと気づけば88歳になっていた。 秋吉 私は、物理的な「終活」は全くできていないですけど、子どもの心で、老いを見つめられるような強さを持ちたいと思っているんです。これも一種の終活だと思いませんか? 歳を取れば取るほど、人生は楽になるどころか、ますます大変になっていくでしょうね。 下重 やがて、そういうふうになっていきますよね。ただ、「いい子」になっちゃ駄目ね。誰にも媚びず、主軸はいつも自分の手元に置くことが大事。自分で考えて、自分で選んで、自分で行動して、その代わり自分で全責任を取る。これしかないです。
■今の歳になって初めて自由を勝ち取れた 秋吉 下重さん、フランスの個人主義みたい(笑)。 下重 そう? 経済的自立と精神的自立、この2つがあれば自由を勝ち取れるんじゃないかと思うの。少なくとも私は、今の歳になって初めて自由を勝ち取ることができたと思ってる。 もっとも、経済的自立は時代背景にも左右されますね。私の母はサービス精神旺盛で、度胸もあって、もし働いていたら仕事ができたと思うの。でも、明治生まれの彼女が生きた時代、女性が男と肩を並べて働くことは容易ではなかった。