ショッピングモールの歌姫・半崎美子「歌手になるため北海道を飛び出し、パン屋で住み込み。反対していた父が、ラジオ局に手紙を送ってくれていた」
◆歌手の夢を反対していた父の“本当の思い” ――天童よしみさんへの楽曲提供で話題となった『大阪恋時雨』が、『第70回NHK紅白歌合戦』で歌われた。当初、歌手になることに反対していた父をはじめ、娘の活躍をご両親はどのように受けとめていたのだろうか。 天童よしみさんが『大阪恋時雨』を歌われた日、私はちょうど実家に帰省していたんです。楽曲提供者として私のクレジットが流れたのを見てすごく感激しましたし、両親も喜んでくれました。憧れの紅白に、先に名前だけ出るという有り難い出来事でした。 はじめにお話した通り、私が歌手になることを父は反対していました。なので、しばらくの間は疎遠状態だったのですが、実は父が、私が住み込みをしていたパン屋さんにこっそりお金を置いていってくれたことがあって。母は母で、私を尋ねてくる際にメロン6個と北海道ラーメン6箱を担いで持ってきてくれたりとか。(笑) インディーズ時代、上京したあとに北海道で凱旋ライブを行ったことがあるのですが、やはり人が集まらなかったんです。そんな時、父がコンサート会場を押さえてくれたり、母がショッピングモールでチラシ配りを手伝ってくれたり。父は、北海道のラジオ局に「娘がCDを出しました」と手紙を添えて送っていて、影ながらずっと応援してくれていたんです。当時は母としか連絡を取り合っていなかったのですが、その時のことを思い出すと今でも泣けてきます。 2008年頃、私が『永遠の絆』という歌を両親に宛てて書いてから、父も少しずつ私の活動を気にかけてくれるようになったみたいです。両親だけではなく、パン屋さんのオーナーもいまも活動を応援してくれていて、本当にありがたいなぁと感じます。初期の頃から応援してくれている方が、現在の活躍を一緒に祝福してくれるのは、この上ない喜びです。
◆校歌を5曲制作、9月からは全国ツアーも ――北海道や栃木県の学校などで、校歌制作も行っている半崎さん。その曲数は、栃木市立栃木北中学校の制作で5校目となる。2024年9月20日より開催予定の全国ツアー「『人生案内』と私」では、どのような思いを歌に込めるのか。 今回の全国ツアーのお話をいただいてから、改めて「人生案内」にまつわる皆さんのお悩みやご回答者の言葉に触れて、自分自身がこれまでショッピングモールライブで続けてきた活動と強くリンクしました。ありがたい大役を仰せつかり、背筋が伸びる思いです。悩みのほとんどは人と人との間に起こるものですが、歌も同じく人を介して広がっていくものだと思うので、これまでの経験を生かした自分なりのコンサートができると希望を抱いています。 コンサートの時は、スケジュール的に可能であれば前日には現地入りして、その土地の空気感を味わうようにしています。土地の風土を感じながら、「ここでお話できることはなんだろう」と考え、自分の活動に紐づけていく時間が好きなんです。コンサートが終わったあとも、音響さんなど裏方のスタッフさんたちと終わる時間が一緒になることが多くて。その場に呼んでくれた人たち、企画してくれた人たち、裏側でがんばってくれた人たちとの交流を深めたい思いがあります。ステージのお客様以外にも「ありがとう」を伝えていきたいです。 私の中に、これまでかかわってくださったすべての方と“共に生きている”という思いが強くあります。共に生きている。これまで、言葉にできないお別れを数々経験しましたが、亡くなった方のために生きるのではなく、「故人に支えられて生きている」思いがあります。見えなくてもそこにいる。魂が、存在が、ある。だからやっぱり、そういう思いから生まれた曲が多いのかもしれません。 校歌の制作に関しては、デビューから8年足らずでこんなにもたくさんのお声がけをいただけるのはありがたいことだなぁ、と。校歌制作のご依頼を受けてからは、その学校に通う生徒さんに話を聞いたり、歴代の文集に目を通したり、校内の風景を見たりと、曲を作るまでの対話に時間をかけています。そこから生まれる形で1曲ごとに丁寧に作っていたら、いろんな学校からお話をいただく機会に恵まれました。 2024年は、上半期だけでも大きな節目となる出来事がたくさんありました。そのうちの1つが、小学5年生の音楽の教科書(教育芸術社)に自分の曲『地球へ』が掲載されたことです。自分の歌が自分自身よりも長生きすること、歌が教科書に載ることが1つの夢だったので、念願が叶い嬉しいです。小学校の特別事業として『地球へ』を子どもたちと一緒に歌ったり、「この曲のメッセージを考える」という音楽と道徳の授業が合わさったような活動もはじめています。未来を担う子どもたちと一緒に、『地球へ』という楽曲を育んでいきたい。そんな思いが、今はすごく強いですね。 これからもたくさんの方々の思いを受け取って、歌にしてお届けできればと思っています。 (構成=碧月はる、撮影=本社・武田裕介)
半﨑美子
【関連記事】
- 井上あずみ「40周年記念コンサート開演直前に脳出血で倒れて。緊急手術から1年が経ち、家族と一緒にリハビリ中。病気の前より夫婦仲は深まって」
- 上田正樹「歌のために風呂桶1つと2万円を持って家出、ホームレス生活を経てデビューしてから50年、やっと〈スタートラインに立てた〉と思える」
- とよた真帆「夫・青山真治を見送って2年半。お互い30代で結婚、20年を夫婦として暮らしたパートナーを失った喪失感は今も消えないけれど」
- 橋幸夫引退宣言撤回の理由、とよた真帆歌と亡き夫への思い、大河ドラマ『光る君へ』美術チームのこだわり【週間人気記事 BEST5】
- ビリー・バンバン弟 菅原進さんが『徹子の部屋』に登場。湯原昌幸さん、せんだみつおさんと1日限定デュオも「作曲家の浜口庫之助先生のアドバイスで兄弟デュオに」