「敵は2分でできるけど、味方をつくるのは3カ月」――林真理子が挑む、組織改革と人生の後半戦
0人だった女性理事を増やし、お茶くみ業務は廃止
大学職員のジェンダーギャップの解消にも早々に着手した。ずっと0人だった女性の理事は、24人中8人に。 「私の理事推薦枠は2枠のみ。いろんな場所で女性を増やしたいと言いまくっていたら、みなさんが思いを酌んでくれ、優秀な外部の女性たちから積極的に候補者を募ってくれました。ありがたい限りです。教育やビジネス分野で課題解決に取り組んでこられた女性も多く、会議で上手に人を説得する方法など、私もたくさん勉強させてもらっています」 メンバーが刷新されたら「会議はとても長くなった」。旧体制時代は根回し優先で議論にすらならなかったが、いろんな意見が飛び交うように。大学職員の人事も大胆に改革した。仕事ができると噂の日大グループの地方職員がいれば面談し、要職に就けた。 日本大学全体に7人のみだった女性課長は、林の抜擢により10人となった。時代錯誤だった秘書室職員による役員へのお茶くみ業務をやめ、女性職員に不評だった和式トイレを洋式にする“トイレ革命”も進める。 「理事長室へ決裁をとりにくる、つまり立場が上の女性職員が増えてきて、すごくいいことだと思っています。ただ、女性管理職はまだ全体の3%程度。ハードルは高いです」 「一朝一夕に変えるのは難しいけれど、まずは女性課長、次に女性部長と着実に増やしていきますよ。よく『女性は役職に就きたがらない』と言われがちだけれど、そんなことはないと思う。うちは働き方改革の成果もあって育児休業制度も整っているから、昇進後も働きやすいんじゃないかな」
子育てをしながら働く大変さは自身が痛感してきた。44歳で娘を出産してからの日々をこう振り返る。 「仕事と家庭の両立なんてしてこなかったし、そもそも両立なんて無理。それくらい子育てと、夫に文句を言われながらこなす家事は大変でした。幸い私には経済力があったから『いつでも別れて自立できる』っていう心の余裕もあった。だからこそ波風立てず我慢して今日までやってきました。こう言うと意外に思われるでしょうけど」 それでも、「どんなに子育てや家事が大変でも、女性は仕事を絶対に手放さないほうがいい」と言葉に力を込める。 「人生って、突然いろんなことが起こりますよ。急に結婚したくなったり、子どもがほしくなったり。そうした場当たり的な運命を信じつつも、大切なのは、それらを乗り切るための体力・気力・経済力を全部持っておくこと。常々私はそう思ってきました」