なぜ天皇杯で“ジャイキリ”が続出したのか…順大がFC東京、Honda が横浜F・マリノスを撃破
先制されながらもくじけず、プロを相手に真っ向から立ち向かった選手たちに堀池監督は目を細めた。対照的に5連敗を含めて黒星がひとつ先行するなど、4月以降に陥ったリーグ戦での不振を引きずるような黒星を喫した長谷川監督は自らを責めた。 「この敗戦を真摯に受け止める。選手はみんな気持ちを出して戦ってくれた」 天皇杯の序盤戦はミッドウィークに行われるため、下のカテゴリーの所属チームや大学生と対戦するときには、前後の公式戦との兼ね合いでメンバーを大幅に入れ替えるJ1勢がほとんどを占める。ゆえに攻守両面でリズムが微妙に乱れ、ひと泡吹かせようと全力で立ち向かってくる相手をさらに乗せた悪循環のなかで追い詰められていく。 最終的に金星を献上する、たとえるなら“アリ地獄”のような図式に横浜F・マリノスもはまった。ニッパツ三ツ沢球技場にJFLのHonda FC(静岡県代表)を迎えた一戦で、2-2のまま突入したPK戦の末に3-5と苦杯をなめさせられた。 北海道コンサドーレ札幌と1-1で引き分けた、6日のルヴァンカップ・プレーオフからマリノスも先発を9人入れ替えた。後半17分にMFマルコス・ジュニオール、FWエウベル、DFティーラトン、MF岩田智輝を投入する流れもFC東京と同じだった。 5分後の後半22分にエウベルのゴールで追いつき、延長前半12分にはFWレオ・セアラのゴールで一時は勝ち越した。しかし、同後半早々にマリノスから見た右サイドを完璧に崩され、途中出場のFW岡崎優希に同点ゴールを叩き込まれた。 もつれ込んだPK戦は、前半28分にPKで先制ゴールを決めていた守護神・楠本祐規がマリノスの1番手、DFチアゴ・マルチンスのシュートを読み切る。強烈な一撃を両手で防ぎ、こぼれ球がポストに当たってはね返る運をも手繰り寄せた。 対するマリノスはPK戦を見越して、延長後半終了間際にキーパーを今シーズンのリーグ戦で出場がない梶川裕嗣から、11試合でゴールマウスを守っている高丘陽平に代えていた。それでもHondaは5人全員が成功させ、敵地に勝利の咆哮をとどろかせた。 「僕たちは天皇杯優勝という目標を掲げているので、次へ切り替えて準備していきたい」 東福岡高から九州産業大をへてHondaに入社して6年目になる楠本が、社員選手の全員が浜松市にある本田技研工業のトランスミッション製造部に勤務する、アマチュアの雄としての意地と誇りを、毎年目標に掲げる「天皇杯優勝」に凝縮させた。