横浜F・マリノスの23歳FW前田大然が大久保嘉人に並ぶJ1得点ランク首位…そのブレイクぶりが凄い理由とは?
勝負の世界では「たら、れば」の仮説も、単純な計算も意味をなさないとわかっている。それでも横浜F・マリノスの東京五輪世代、FW前田大然(23)が魅せた異次元のパフォーマンスを目の当たりにすると想像を膨らませてしまう。フル出場していたら、どのような数字が叩き出されていたのか、と。 ホームの日産スタジアムで浦和レッズに3-0で快勝した、14日の明治安田生命J1リーグ第4節。前半3分と26分に3試合連続となるゴールを決め、通算5ゴールで得点ランクトップのFW大久保嘉人(セレッソ大阪)に並んだ前田のスプリント回数は、FWオナイウ阿道との交代でベンチへ下がった後半17分の時点で、今シーズンのJ1全体で4位となる「39」に達していた。 約3分の2の出場時間で両チームを通じて最多を数えた「39」を、フル出場した場合の回数に換算すると、J1リーグの歴史上で最多となる「56」が弾き出される。それでも前田は平然としていた。 「前線からのスイッチを僕が入れる、という思いでプレーしています。チームが勝つために僕は走っているので、こうやって報われて本当によかったと思っています」 3トップの真ん中で先発し、攻守両面でマリノスのスイッチを入れ続けた。50mを5秒7で駆け抜ける韋駄天ぶりと、一気にトップスピードへ到達する驚異の加速度で、リカルド・ロドリゲス新監督のもと、最終ラインから丁寧にパスをつなぐスタイルを目指す浦和へ強烈なプレッシャーをかけた。 猛然と敵陣へ迫る「38番」にけん引されるように、高い位置での連動した守備から電光石火の先制点が生まれた。右タッチライン際でボールをもったFW杉本健勇へ後方からDFチアゴ・マルチンスが、前方からはFW仲川輝人が挟み撃ちにした。 たまらず杉本の足元からこぼれたボールを仲川が突っかけ、MF扇原貴宏がワンタッチで前方へはたき、トップ下のマルコス・ジュニオールが巧みなターンで浦和のキャプテン、MF阿部勇樹のマークをはがす。右サイドでフリーになっていた仲川へパスが通った次の瞬間だった。 仲川が放ったアーリークロスに反応したのは前田。浦和の守護神、西川周作が懸命にダイブし、伸ばした右手の先をかすめてファーサイドに落ちてきたボールをトップスピードに乗り、最後はスライディングしながら必死に伸ばした左足でとらえて無人のゴールに押し込んだ。