高校生たちがチョークで描いた色とりどりの「てふてふ」 黒板アートにかけた青春と悔しさ
学校の黒板をキャンバスに見立て、作品の芸術性を競う「日学・黒板アート甲子園2024」に、奈良県内から県立高田高校(大和高田市)の美術部が出場した。作品は、女子高生の周りを飛び交う色とりどりのチョウチョウを描いた「てふてふ」。残念ながら入賞はかなわなかったが、生徒らは「私たちの持てる技術はすべて出し切った」と晴れやかに話す。 【写真】「てふてふ」を前にする奈良県立高田高校の美術部員ら 黒板アート甲子園は黒板やホワイトボードの製造販売会社「日学」が平成27年から毎年7~9月ごろに開催している。同校は美術部顧問の浜崎祐貴教諭(38)が赴任してきた令和4年から挑戦。初出場ながら審査員特別賞を受賞し、昨年は近畿ブロックエリア賞を受賞するなど、頭角を現しつつある。 3回目の挑戦となる今回は、7月半ばに1、2年の部員47人全員でアイデアを持ち寄って話し合った末、チョウチョウを題材とすることを決定。夏休みには橿原市昆虫館を訪れ、学芸員に話を聞いた上でチョウの羽ばたき方などを観察した。図鑑や画像などを参考に、1人1匹以上のチョウを描いた。 部長の2年、林美緒さん(16)は中心に立つ女子高生の顔の部分を担当。納得がいくまで何度も書き直し、直前に「未来への希望」を夢見るあたたかな瞳と表情を描くことができた。「美術部は基本個人プレー。それぞれ個性が異なる中で、こうしてみんなで一つの絵を描くことは難しい」と話す。副部長の2年、坂下琥太郎さん(17)は「羽の鱗粉や色もチョークで細部を表現して、リアリティーを求めた」と力をこめる。 今回は177校から293点の応募があり、「てふてふ」は選外となった。だが、9月上旬に開かれた文化祭で一般に披露され、保護者や美術部OBから多くの反響を呼んだという。「悔しかったが、来年は後輩たちに頑張ってほしい」と坂下さん。「てふてふ」は消してしまったが、そのときのチョークの粉は「甲子園の土」ならぬ「甲子園の粉」として、瓶に入れて部員全員に配る予定だ。 浜崎教諭は「部員全員で臨んだ絵の力を感じる作品。先輩から引き継いだことや今回の悔しさを忘れず、自分たちの人生に役立ててもらいたい」と話した。(木村郁子)