【58歳 小泉今日子さんインタビュー】老いへの不安、これからの自分を支えるもの
”この言動は16歳の私に恥ずかしくないか、70歳の私を支えるのか”を大事にしている
読書家として知られる小泉さん。本を読むことは日常であると同時に、特別な体験をもたらしてくれるものだったようだ。 「今というより10代、20代のときにとても大きな影響を与えてくれたなと思います。読書をしているときって、まわりの人からしたら、ただ椅子に座ってページをめくる、すごく静かな時間に見えるけれど、本を読んでいる私は宇宙とかにまで行っているんですよね。すごく忙しい時間を過ごしていた当時、テレビ局の中での待ち時間の最中でも、本はその環境から私をサッと引き離してくれるものだったから、すごく助けられたし。本を読むことで、自分が知らない言葉や出来事などたくさんのことを知ることができて、心の中の森がモニョモニョモニョ~って大きく広がっていくような感覚があったので、勝手に飛び出す絵本みたいですごく楽しい体験だったんですよね。だから、私は本に出会えて、本を読むことが好きになれて本当によかったなと思います」 『ピエタ』もまさに小泉さんの心の中の森を大いに豊かにしてくれた一冊だろう。物語の終盤には「むすめたち、よりよく生きよ」という、読む人の心に直接語りかけてくるようなメッセージが登場する。自身もそのような感覚を抱いたという小泉さんに“よりよく生きる”ために大切にしていることを聞いてみると、軽く上を見上げ、少しの思索の後にこう答えてくれた。 「自分の核にある、少女だったころに世界を見ていた疑いのない目みたいなものを基準に判断するというのはずっと大事にしていることかもしれないです。やっぱり大人になるにつれて、外から入ってくる知識や情報で心がブレそうになるじゃないですか。そんなときに唯一支えてくれるのは自分の記憶とかだと思うので。5歳の私、16歳の私、20歳の私みたいに、70代ぐらいまでの私が横に並んでいて、そのひとりひとりが私の“セルフシスターフッド”だと思うんです。だからもし今、踏み出そうとしている一歩が結構苦しい一歩だとしても、“ここで私がズルをしないで頑張って一歩踏み出せば、70代の私、きっと笑えるよな”とか“16歳の私もよくやったって言ってくれるよな”という感覚が自分の中にあるんです。もちろんそこには、本当の友だちとか仕事仲間とか家族とかファンの人とか、いろんな人がまわりにいて、巨大なシスターフッドになっているイメージがあります。でも自分の中で、“この言動は16歳の私に恥ずかしくないか”“この行動は70歳の私を支えるのか”と考えると、割と納得して動けるし、ずっとそうやって生きてきたので、そこはすごく大事にしています」