【58歳 小泉今日子さんインタビュー】老いへの不安、これからの自分を支えるもの
聞く人の生活圏内に物語が入っていくことを想像するとすごく楽しい
今作は女性たちが過去からのさまざまな思いを抱えながらも、身分や立場を超えた強い結びつきでひとつの答えに向かっていくという、まさにシスターフッドの物語。時を経て、それぞれにいろいろな経験をした同年代の仲間たちと再び集まるという経験は、小泉さんにもあるようで。 「10代、20代、30代、40代と、そのときそのときでいろんなお友だちと出会ってきました。20代のころは横のつながりで、いろんな面白いことを考えて形にした時期もあって、それもすごく楽しかったけれど、それぞれが自分の道を歩いていって、今また集まり始めたという感じがあって。それは仕事の仲間に限ったことではなくて、私は高校を中退しているので中学までの同級生しかいないんですけど、その同級生たちも次のフェーズに入って時間ができたことで、会ってごはんを食べたり、舞台やライブを見に来てくれたりということが最近また始まっている気がしますね」 かつての同級生たちも見に来てくれた舞台『ピエタ』での経験は、今回のAudibleの朗読でも生きているという。 「声だけですべての役を演じ分けなければいけないというときに、舞台で演じてくださったみなさんの姿が浮かんで、そのときの表現にすごく助けられました。あと、女性の登場人物もですけど、男性の部分を読むのが意外と楽しくて、ゴンドリエーレ(ゴンドラの漕ぎ手)のロドヴィーゴさんは自分でもよかったと思う(笑)。著者の大島真寿美さんにも褒められました(笑)」 本を愛し、表現を愛する小泉さんにとって、Audibleは大事にしたい作品を多くの人に届けられる新たな手段だ。 「さっきの得意、不得意で言うと、本を読むのが苦手で音楽みたいに小説を楽しみたいという人もいるかもしれないし。家事とかやるべきことに追われて、ゆっくり本を読む時間がなかったり、老眼で文字が読みにくくなったり、目の病気で視力を失われていたり、病気で伏せっていたり、いろんな事情の人がいると思うので、選んでもらえる選択肢がひとつ増えたというのはすごくうれしいことですね。Audibleって私たちがやっていること自体はあまり変わらないけれど、受け取る人の環境が変わるじゃないですか。お家で家事をしながら、車を運転しながら、通勤のときにヘッドホンでとか、もしかしたら公園で空を見上げながら聞く人もいたり、聞く人の生活圏内にその物語が入ってくるので、そういうことを想像するとすごく楽しいなと思います。諦めずにいろんな方法で、いろんなことを表現したいと思っている私としては、好きなものを選んで楽しんでね、といつも思っています」