【58歳 小泉今日子さんインタビュー】老いへの不安、これからの自分を支えるもの
12月13日からAmazonオーディブル(以下Audible)で配信される小説『ピエタ』。朗読を務めるのは、2011年に本作に出会い、ぜひ舞台化したいと10年以上にわたり構想を続け、プロデュースと主演を務めた小泉今日子さん。作品の魅力を誰よりも深く知る彼女の言葉は、アラフィ―世代がこれからを生きるための道しるべのようでもある。 【写真】有名人が語る!大人の心に響く言葉
少女のときの気持ちをきれいに磨いてメンテナンスしてあげたら、ここから先を生きられる気がした
『ピエタ』(大島真寿美 著)の舞台は、18世紀のイタリア・ヴェネツィア。孤児の養育施設で出会った少女たちが、長い年月を経て、かつて音楽の指導をしてくれた作曲家ヴィヴァルディの死を機に再び引き寄せられるところから始まる物語。今作と出会った当時、登場人物たちと年代が近かったこともあり、小泉さんはこの物語にすぐに心をつかまれた。 「私が最初に『ピエタ』を読んだのは40代のころで、ちょうど自分がこれから向き合っていく、年齢であったり、老いみたいなことへの不安が暗雲のように頭の中に生まれ始めたときでした。この物語は、ヴェロニカという貴族の女性が少女時代に自作の詩を書き込んだ楽譜を探すところから展開していくんですけど、ヴェロニカが探し求めた「楽譜」のようなものって、みんな何かしらあると思うんです。それは子どもの頃に見た、きれいな空かもしれないし、きれいなお花かもしれないし、あの曲、あの映画、あの風景みたいなものかもしれないけれど、そこがすごくすとんと納得できて。私ももう一度、自分の核となっている少女のときの気持ちみたいなものを探し出して、きれいに磨いたりメンテナンスしてあげたら、ここから先を生きられるような気がしたんです」 『ピエタ』に登場する女性たちの多くは、ちょうどアラフィー世代。思わず誰かと気持ちを重ね合わせながら読んでしまう小説でもある。 「私が最初に『ピエタ』を読んだときは、ヴェロニカが自分の気持ちと一番近いかなと思っていたんですけど、最近ではコルティジャーナ(高級娼婦)のクラウディアさんの気持ちもすごくわかるし、プロデューサーみたいな立場で動いているとエミーリアの気持ちもわかる、そうやって自分がどんどん増えてきています(笑)。『ピエタ』って、そのときの自分の年齢や状況によって誰と重ね合わせるかが変わっていくんですよね」