東京五輪代表にOA枠選出のキーマン遠藤航の“欧州市場価値”が約2億円から約13億円に跳ね上がった理由とは?
肝のすわった立ち居振る舞いは、Jリーガーのころからまったく変わらない。さらにヨーロッパ5大リーグのひとつ、ブンデスリーガ1部での初めての戦いを終えた遠藤航(シュツットガルト)は、ピッチの内外で常に「自信」を漂わせる存在になった。 静岡県内で行われている、東京五輪へ向けた事前キャンプ2日目の6日。午前の練習後にオンラインでメディアに対応した28歳のボランチは、オーバーエイジとして臨む2度目の五輪への目標を問われると表情を変えずに即答した。 「やはりメダルだと思うし、個人的には金メダルを取るつもりでいます」 移籍市場に特化したウェブサイトとして知られ、世界中のクラブや代理人が関心を寄せる「トランスファーマルクト」が、最新の市場価格を更新したのが6月上旬。日本人選手に絞って数字を見ていくと、地殻変動にも映る変化が生じていた。 2500万ユーロ(約32億7000万円)でトップに立ったのは鎌田大地(アイントラハト・フランクフルト)。日本代表でもトップ下を不動のものにしつつある24歳に、2000万ユーロ(約26億1600万円)のDF冨安健洋(ボローニャ)が続く。 3位と4位には1500万ユーロ(約19億6000万円)のMF久保建英(レアル・マドリード)、そして1200万ユーロ(約15億7000万円)のMF南野拓実(リヴァプール)が、ともに前回の発表から市場価格は横ばいとなっている。 そして5位に名を連ねたのが1000万ユーロ(約13億円)の遠藤だった。鎌田や22歳の冨安、20歳の久保に比べて中堅となる遠藤の市場価格は、年齢と知名度の低さに呼応するように、昨年4月の段階で160万ユーロ(約2億1000万円)だった。 つまりわずか1シーズンで、自らの価値を6倍以上もアップさせた計算になる。市場価格そのものでは鎌田に及ばないものの、同じく昨年7月の1200万ユーロから2倍あまりに上昇させた鎌田よりも、伸び率でははるかに遠藤が上回った。 シュツットガルトでの2020-21シーズンを振り返れば、遠藤の評価が急上昇した理由がわかる。ドイツ語で「1対1の勝負」を意味する『ツヴァイカンプフ』の勝利数で、遠藤は「476」もの数字を叩き出してブンデスリーガ1部の1位に輝いた。 日本代表のヴァイッド・ハリルホジッチ元監督が、何度も唱えて日本へ浸透させた「デュエル」で屈強な男たちを抑える快挙。球際の攻防で弱いとされてきた日本人選手の概念を覆した遠藤は、2部から昇格したシュツットガルトに所属する無名選手から、いつしか「リーグで最も危険な6番」とスポットライトを浴びる存在になった。 6番とはボランチを意味する。1部でプレーするまで『ツヴァイカンプフ』が数値化され、ランキングで示されることを知らなかった遠藤は「評価される、という意味で個人的にはすごくありがたい」と歓迎しながらこんな言葉を残していた。 「ボランチとして戦う以上は、そこの勝利数は増やしていきたいと思っていました」