「引っ越しうつ」に「テレワークうつ」...いい変化なのにメンタル不調が起こるのはなぜ? “気分がずーんと沈む”経験をした私が専門医に聞いてみた
結婚、妊娠、個人的な輝かしい成功もストレスになる
誰もが陥る可能性のあるメンタルの不調。まだまだタブー視されている部分はありますが、芸能人がメンタルヘルスについて発信する機会も増えてきました。先日放送された「上田と女がDEEPに吠える夜」(日テレ系)ではメンタルヘルスをテーマに芸能人がトークを繰り広げ、うつ病や産後うつの経験を告白するシーンも。 メンタルの不調は、パワハラを受け続けることや身近な人の死など、マイナスな出来事によって引き起こされると思われがちですが、舟木彩乃さんの著書『「なんとかなる」と思えるレッスン 首尾一貫感覚で心に余裕をつくる』の「ライフイベント・ストレス表」を見ると、1位の「配偶者の死」や2位の「離婚」など、わかりやすく辛い出来事のほかに、7位に「結婚」、12位に「妊娠」、25位に「個人的な輝かしい成功」など、一見喜ばしいと思われることも“ストレス”としてランクインしています。 吉高由里子さん主演でドラマ化もされ、シリーズ累計部数26万部を達成した大ベストセラー『わたし、定時で帰ります。』(新潮社)の作者である朱野帰子さんは、“急な売れ”という、本来作家が願ってもない喜ばしいことを経験したことで、メンタルダウンし、書けなくなり、回復まで1年間かかったことを著書『急な「売れ」に備える作家のためのサバイバル読本』の中で告白しています。 筆者も、本来喜ばしいことなのにもかかわらず、メンタルの不調に陥るということを経験しました。
劣悪環境からの念願の引っ越し。心が晴れたと思いきや…
まずは、人生で初めての一人暮らしです。 貧乏生活が長かったので、ずっと格安シェアハウス暮らしを続けていました。都内でも家賃は共益費込みで3万円台と破格。その代わり治安は悪く、住人同士のトラブルは絶えませんでした。さらに、エアコンがなくて熱中症になったり、トコジラミが大量発生したり、ほこりが酷くてハウスダストアレルギーになったり、雨漏りで床に湖ができたり……とにかく本当に環境が劣悪でした。ストレスで体調を崩し、入院を経験するほど。それでも引っ越すお金がなくてずるずる続けたシェアハウス生活に、終止符を打つある事件が起きたのです。 最後に住んだシェアハウスはめちゃくちゃ壁が薄くて、どんなに小さな音も隣に筒抜けというところでした。ある夜PC作業をしていると、下の住人が怒鳴りこんできたのです。「うるさいんだよおおおおおおおおおお」と耳をつんざくような喚き声。身の危険を感じました。PC作業をするくらいで音は出していなかったのに怒鳴りこまれたので、息を殺して生活するようになりました。その怒鳴りこんできた住人は日中、ずっと何かを殴るような“ドコッ! バコッ!”という音を頻繁に出していて、ものすごく不気味だったんです。 いよいよこれはヤバイと思い、知り合いが紹介してくれたウィークリーマンションに避難。追い込まれた結果、人生初の一人暮らしの物件探しをし、無事入居が決まりました。 今まで4畳など激狭な空間しかなかったのが、6畳になり、しかも誰にも侵害されない自分だけの空間があるという奇跡。物音に怯えることも、怒鳴りこまれる心配もない。はぁ、これでやっと平穏な生活が始まる……そう思ったのも束の間、思いがけない変化が表れたのでした。 引っ越し自体は、格安シェアハウス時代に何度も経験していたし、慣れていたはずでした。それに、自分だけのプライベート空間がある一人暮らしは、プライバシーもクソもなかったシェアハウス時代には喉から手が出るほど欲しかったもの。それなのに、新生活が始まると、徐々に心が沈むようになりました。