特別レシピ公開!「宇宙の香りのコーヒー」は本当に作れるのか?
"宇宙を感じる"スペシャルメニューをご提案!
以上を踏まえて、今回、私が提案するのは下の3つである。 今回はあくまで「コンセプト優先」のため、味の保証はいたしかねる(少なくとも万人受けはしないだろう)が、本のテーマに合わせてお供のコーヒー(+カップ)を選べば、読書の楽しみが倍増すること請け合いだ。 コーヒー豆:「宇宙の香りを楽しむコーヒー」 エチオピア(アナエロビック)・浅煎りまたは中煎り 「ラズベリーの香り」が最も出やすい産地・精製・焙煎度の組み合わせである。精製法としてはナチュラルでも可だが、「宇宙空間=酸素がない」というこじつけで、アナエロビックを選んでみた。 なかなか目にする機会は少ないが、例えば、昨年10月にはブルーボトルコーヒーが、エチオピア・シダモ地域のアナエロビックを取り扱っていた。他にも現在、イルガチェフ地区や、西南部のグジ地区などで作られたアナエロビックが日本に輸入されており、それらを扱っているコーヒー店が複数見つかるはずだ。 ただ、これらの発酵技術は、まだ日が浅くて未完成な部分もあり、じつはコーヒー関係者からの評価も分かれている。品質が安定しているとは言い難く、ものによってあまりラズベリーの特徴が出ていない場合もあれば、発酵臭がどぎつくて下品に感じられるものまである。後者のタイプなら、他の豆とブレンドして調整したり、後述のアレンジにするのもありだろう。 個人的にエチオピアは、ほのかに発酵系の香りを残した深煎りも捨てがたいが、今回は「宇宙の香り」を前面に押し出すため、できるだけ発酵感が強めの浅~中煎りをチョイスしたい。 アレンジメニュー「宇宙の香りのコズミック・ラテ」 材料(マグカップ1杯) コーヒー豆:エチオピア(アナエロビック)浅~中煎り牛乳:200~250 cc色見本:HTMLカラーコードで #FFF8E7 マグカップに牛乳(ホットでもアイスでも好みで)をいれ、色見本と同じ(近い)色になるまでコーヒーを加える。今回は、ミルクフォーム(牛乳の泡)は浮かべず、カフェオレ風に混ぜるだけの方がいいだろう。 いわゆる「カフェラテ」のように泡立てると、泡の部分が時間とともに変色しやすい(コーヒー色素にはキノイドというpH指示薬と似た分子骨格があり、コーヒーの泡はわずかなpHや温度の変化で濃淡が変わりやすい)。 通常、カフェラテやカフェオレでは深煎りを使うことが多いが、コーヒー豆は焙煎するにつれて、薄い緑(生豆)→黄褐色→赤褐色→黒褐色と変化する。やや黄色味がかった白色のコズミックラテには、浅~中煎りの方が色を近づけやすい。抽出法はドリップでもエスプレッソでも何でも良いが、豆とお湯の量を調整して、できるだけ濃いものを準備する。 それでも色を合わせると、コーヒーの量がかなり少なく、ミルクの風味に「宇宙の香り」が負けてしまうのは仕方ないところか。発酵臭がキツすぎるくらいの豆が向いていそうだ。 変則的だが、お湯の代わりに直接、牛乳で抽出する方法もある。この方法は、コーヒーの色素や苦味成分が、すぐに乳タンパク質と結びついて不溶化して被膜のようになり、味や色が出にくくなるため、通常はあまりお勧めしない。ただ、色を抑えながら香りを引き出すという今回の目的には、割と向いているかもしれない。通常のドリップ器具では目詰まりしやすいため、お茶パックなどにコーヒー粉を入れて煮出すとやりやすい。 番外編:「ブルーバックス・ラテ」 ブルーボトルコーヒーの豆を使って、スターバックスみたいなカフェラテを作って、ブルーバックスコーヒーマグカップで(←ここ重要)飲む。 一発ネタだが、エイプリルフールの公式ツイートを見た何名かがコメントしていたのに便乗して。ちなみに1963年創刊のブルーバックスのほうが、ブルーボトルコーヒー(2002年創業)やスターバックス(1971年創業)より歴史が古い。心得がある人なら、ラテアートで銀河系などを描いてみるのも楽しいかもしれない。 大好評発売中! 科学の視点から、より深くコーヒーを知りたい方はこちらをぜひ。 コーヒーの科学 「おいしさ」はどこで生まれるのか 科学論文に基づく知見を踏まえて、コーヒーのさまざまな謎に迫る!
旦部 幸博(滋賀医科大学准教授・医学博士)