特別レシピ公開!「宇宙の香りのコーヒー」は本当に作れるのか?
ラズベリー風味のコーヒーは実在するか
ぎ酸エチルの香りを感じるコーヒーの実現は厳しそうだが、何とかならないだろうか。香料として直接、加えればいい? ……確かにそれも一つの手だが、別の角度から「宇宙の香り」を彷彿とさせるコーヒーへのアプローチを考えてみよう。 あまり馴染みがない人も多いと思うが、じつは、世界には「ラズベリーの香り」がすると言われるコーヒーが実在する。プロのコーヒー鑑定士たちが、コーヒーのテイスティング(カッピングとも呼ぶ)をおこなうとき、コーヒーの香味(フレーバー)をいろいろなものに喩えて表現するが、「ラズベリー」は、そうした用語の定番の1つなのだ。 例えば、スペシャルティコーヒー協会 (Specialty Coffee Association, SCA)という業界団体が、コーヒー研究者の集まりであるWorld Coffee Research(WCR)と共同で作成した香味表現の用語集 "WCR Sensory Lexicons"や、それらの言葉をカラフルな見た目に配置したフレーバーホイール "Coffee Taster's Flavor Wheel"の図の中にも、「ラズベリー Raspberry」があるのが見てとれる。 また、世界中のスペシャルティコーヒー専門店から集めたコーヒーのテイスティング結果を公開するウェブサイト "Coffee Review"を検索すると、香味を表現するときに"raspberry"という言葉が使われたコーヒーが500件以上ヒットする。 スペシャルティコーヒーは、もともと1970年代アメリカで一部の中小コーヒー業者たちが掲げた、標準的なコーヒー(=コモディティコーヒー)とは一線を画する「香味に特徴がある高品質なコーヒー」のこと。その考え方はスターバックスやブルーボトルコーヒーなどにも引き継がれ、今では世界中に広まっている。 もともとアメリカは、飲食品全般でラズベリーやブルーベリー、ブラックベリーなど、ベリー系のフレーバーを好む人が多いせいか、アメリカのコーヒー関係者たちが特にこれらの表現を好んで使う傾向がある。ベリーの中でもラズベリーは、甘味控えめで酸味が強いため、すっきりとした酸味に特長がある浅煎り~中煎りのコーヒーが、そのイメージにマッチするようだ。