冬の気分低下どう乗り切る?【Dr.純子のメディカルサロン】
今年は夏から秋を通り越して一気に急に寒くなったと感じている方が多いと思います。日が暮れるのが早くなると気分が暗くなるという方もいます。毎年この季節になると気になるのが「冬季うつ」ですが、今年はうつというほどではないが、「すぐ疲れてしまう」「やる気が出ない」「甘いものを多く食べてしまう」などの悩みを訴える方がいます。 (文 海原純子) 日照時間が短くなる季節に多いこうした症状は「季節性情動障害」の可能性があります。いわゆる「冬季うつ」で、日照時間が短くなると症状が発現しますが、その原因ははっきりとはしていません。ただ「幸せホルモン」と呼ばれる神経伝達物質セロトニンが減少することや、体内時計をつかさどるメラトニンの分泌状態が変化することが影響するのではないかと言われています。通常のうつは朝早く目が覚めたりする睡眠障害が起こりやすいのですが、冬季うつの場合は逆に抑うつ感やだるさ、過眠、甘い物や炭水化物の過食といった症状が見られ、男性より女性の方が罹患(りかん)率が高いとされています。 この季節の気分低下をどのように乗り切るかを考えます。
◇心掛けたい4つの習慣
1.太陽のバイオレットライトを味方にする 午前中に太陽に当たる時間をつくりましょう。ちょっと寒いものの、起きたらまず窓を開けて太陽の光を浴びてください。午前中に太陽に当たると14~16時間後に脳内にある松果体からメラトニンが分泌され、眠りに入りやすくなるのです。体内時計の乱れを防ぎ、夜の寝付きを改善することで睡眠の質を確保してください。 昼間の天気が良ければ戸外で過ごす時間をつくってください。太陽の光に含まれるバイオレットライトという波長の光は目の網膜の「OPN(オプシン)5」という光受容体を活性化するのですが、OPN5は脳波を含めた脳機能に影響し、うつや神経系の治療に有効な可能性が示されているそうです。バイオレットライトはガラスで遮断されてしまうので窓を開けたり戸外で過ごしたりすることが必要です。さらに、網膜にあるOPN4は昼に太陽の光を浴びるとメラトニンの分泌を促し、夜の睡眠を促してくれるとされています。 2.少し速足で歩くと気分が変化する 歩いたりストレッチしたりして体を動かすことは、気分をうつから守る大事なポイントです。速足で歩くことが気分と関わるという研究が進められています。量子科学技術研究開発機構の山田真希子博士は、身体機能(歩く速さや姿勢)とメンタルヘルスの関連について研究し、歩く速さが心理的状態に影響を与える可能性を指摘しています。歩行速度が速いほどポジティブな感情が高まり、ストレス耐性が強化される傾向があると考えられています。無理のない範囲でいつもの歩行にちょっと速足で歩く割合を増やしてみてはいかがでしょう。気分は姿勢とも関わり、猫背で下を向いていると気分が低下するとされています。パソコン操作で猫背になっているようなら合間にストレッチして背筋を伸ばすといいでしょう。 3.朝食をきちんと取る 朝食はきちんと取ってください。ヨーグルト、ミルク、納豆、チーズ、卵などたんぱく質を中心に果物を組み合わせて食べると、昼前に低血糖によるだるさや集中力低下を防ぐことができます。忙しくて時間がないという方には、バナナとヨーグルトだけでも取ってみては、などと勧めています。 4.自律神経を調整 気温に適応して体温を一定に保つために、自律神経は絶えず働いています。カモミールのハーブティーや蜂蜜とショウガの飲み物や甘酒など温かい飲み物を飲むとリラックスして交感神経の緊張が緩和されます。夜寝る前は、深呼吸をして交感神経を緩めてください。シャワーだけでなく、お風呂に入ってゆっくり体を伸ばすのもいいでしょう。ベッドでストレッチをする習慣も大事です。 寒くなると外に出るのがおっくうになりがちです。朝も暗いので寝坊しがちになるものです。ですが、少しでも外に出て太陽に当たり身体を動かすことが気分をうつスパイラルから救うことになります。ちょっと速足で歩くことも無理ない範囲でぜひ試してください。(了)