「いいやつ」から「大親友」に。 カゴメ が目指す、記憶に残る「体験設計」の生み出し方
LIKEだけどLOVEじゃない
DD:具体的にはどういうことでしょうか。 細川:ロイヤリティという点では、年に1回調査を行っています。そこから見えてきたのは、カゴメというブランドは「いいやつだけど仲がよい友達じゃない」という感じなんです。これは、日常の中の接点の問題なのでは、と思っています。日常で必ず使う食品や調味料などと違って、必ずしも接点があるとは限らない。だから「好き」にならないという意味です。 カゴメでは、ファンになっていただくために「3つの要素」を大事にしています。「原体験」「商品体験」「企業体験」の3つです。商品体験は購入で企業体験は工場見学などがあがりますが、私が考える商品体験や企業体験は「ライフステージのどのタイミングでカゴメと出会い、記憶に残るか」が重要だと考えています。 「商品体験」でわかりやすいのは離乳食です。トマトジュースやピューレーを薄く伸ばして冷凍しておくとそのまま食べさせられて便利なのですが、「何を食べさせればいいかわからない」というときにそういった情報や体験は記憶に残ります。それがポジティブな体験であれば、別のカゴメの商品に出会ったときもポジティブなイメージが湧くと思うんです。 DD:原体験の醸成はたとえばどんなことでしょうか。 細川:たとえば、子どものころに家で食べたオムライスとカゴメのトマトケチャップが記憶に残っていて、自身が家庭をもった際、昔食べたオムライスを思い出してつくってみようとカゴメのケチャップを購入したというお客さまがいらっしゃいました。 その方にとって家庭の味をつくるためにはカゴメのケチャップが必要ということです。 DD:その方にとっては、「いいやつ」どころか大親友になったわけですね。 細川:そんな風にライフステージに関わることができるのは嬉しいですし、貴重な経験でした。我々の目指すべきは、お客さまのライフステージに寄り添った体験設計をどう作るかです。 お客さまの日常で接点を増やすという意味で直近強化しているのが「健康を贈る」というコミュニケーションです。ひとり暮らしの子どもに、母親から野菜ジュースを贈る。あるいは、子どもが初任給で、両親に「これからも元気でいてほしい」とトマトジュースを贈る。そういった体験も増やしていきたいですね。 DD:ご自身では、どのようなコミュニケーションに価値があると考えていますか。 細川:最近はデジタルテクノロジーの進化で、ターゲティングの精度も上がってきました。でも自分に合った商品しか提供されないのは、便利なようで少し寂しくもあります。何か新しい気づきがあるものや「実はこれが欲しかった」と思えるような機会を作れたら、自分のなかでは価値あるコミュニケーションだと思います。 自社通販「健康直送便」でもっとも売れている野菜ジュース「つぶより野菜」 Written by 島田ゆかり Photo by 三浦晃一
編集部