財界、労組の年金改革案の残念な中身 高所得者の年金カット、支給開始年齢引き上げ、3号制度廃止…
この文書にはさまざまな図表が盛り込まれており、連合案の詳細を解説しているのだが、目を通した社会保障審議会年金部会(厚生労働相の諮問機関)の委員の1人は「お絵描きでしかない」と切って捨てた。 ▽「制度廃止ありき」の会長トップダウン 連合関係者の証言によると、今回の3号廃止案は芳野友子会長の号令一下、「制度廃止ありき」で進められたという。 10月18日の記者会見でも芳野会長は3号制度に対する問題意識を以前から持っていたが「労働組合の意思決定の場は男性が非常に多く、なかなか女性役員の声が届かなかった」と語っている。 意思決定の場に女性の声が反映されるのは望ましいことだが、負担と給付が絡むデリケートな制度改革を巡ってトップダウンで決定するのはいかがなものであろう。連合傘下の大規模単組の一部からは3号廃止に反対する意見も上がったが、「女性幹部たちが押し切った」との証言もある。 ▽配偶者が健康保険の扶養を外れるのに、祖父母や兄弟姉妹は扶養対象?
連合案で最も奇妙なのは、健康保険の被扶養者の範囲である。国民年金の3号廃止に伴って、専業主婦(主夫)は健康保険の扶養からも外れることになるとしており、国民健康保険の被保険者として新たに保険料を負担する。論理は一貫しており、合理性があるといえるだろう。 しかし、「社会保険の被扶養者は無就業・無収入の親族のみとなる」との記述には首をかしげざるを得ない。 現行の健康保険制度では「被扶養者」の範囲は意外に広い。連合案だと、子ども、父母や祖父母ら直系尊属、孫や兄弟姉妹も引き続き扶養の対象となり得る。子どもについては理解できるとしても、祖父母や兄弟姉妹が扶養に入れる一方、配偶者は対象外というのはアンバランスで、一般の社会通念からは理解しがたいだろう。性急な「3号制度廃止ありき」で突き進んだ結果、このようなちぐはぐな制度改革案ができあがったのではないか。 厚労省は現在、厚生年金の適用拡大を推し進めている。2024年10月からは従業員数51人以上の企業に勤めるパートら短時間労働者も厚生年金の適用対象となった。今後も、企業規模要件の撤廃や、非適用業種の見直しといった拡大策が見込まれている。