財界、労組の年金改革案の残念な中身 高所得者の年金カット、支給開始年齢引き上げ、3号制度廃止…
▽専業主婦も保険料支払い…でも、未納が増えないか 一方、日本労働組合総連合会(連合)は10月18日、「働き方などに中立的な社会保険制度(全被用者への被用者保険の完全適用、第3号被保険者制度廃止)に対する連合の考え方」と題した文書を公表した。 中身はずばり、国民年金の第3号被保険者制度の廃止案だ。3号被保険者は専業主婦に多く、自らは保険料を負担することなく将来の基礎年金給付が受けられる。3号の妻全体のうち夫の雇用者所得が1千万円以上あるケースが1割余りを占める。1号被保険者(自営業者ら国民年金のみの加入者)や単身者、共働き家庭から、かねて「不公平だ」との批判がある。 連合案では10年程度の移行期間を設け、3号制度を撤廃するという。3号被保険者は強制的に1号被保険者に種別が変更される。つまり、今は低収入や無収入の専業主婦として3号に該当する人も、将来的に国民年金保険料(2024年度は1万6980円)を支払うようになるのだ。3号制度を批判してきた人にとっては溜飲が下がる提案かもしれない。
ただ、現状の3号にはさまざまな属性の人が混在していることに留意すべきだろう。3号といっても“シロガネーゼ”のような富裕層ばかりではない。育児や介護のために仕事に就く余裕がないケースもあれば、重い障害のために就業できない人や失業者も含まれる。そのような人々に対しては、連合案では新設する「生活手当(仮称)」を配るのだというが、財源が公費(税)なのか保険料なのかは明らかにされていない。要は生煮えなのだ。 この「生活手当(仮称)」が実現できないまま3号廃止を強行すると、少なくない保険料未納者と低・無年金者を生み出すことになるが、それでよいのだろうか。 付け加えると、3号から1号に種別変更する人が増えると、公的年金の持つ所得再分配機能は弱まることになる。1号被保険者の場合、定額の保険料を納めて定額の給付を受け取る仕組みとなっており、高所得層から低所得層に資金を移転させる所得再分配の機能が働かないためだ。だが、これまで連合は社会保障制度における再分配機能の強化を主張してきた。自らの従来姿勢と矛盾することへの説明はない。