「『逆らえば地獄に落ちるぞ』住職にマインドコントロールされ、性暴力を14年間受けた」 口をつぐむ大僧正、真実は…
そう心に決め、最後に大僧正を訪ねた。ところが「身内を訴えて、どうするんじゃ!」と大声で怒鳴られ、住職の寺に戻るよう説得された。 得度を受け、尼僧になった。再び始まった寺での生活。性暴力やどう喝を防ぐため、「意に反した性行為や暴力は行わない」と約束する念書を作成し、住職も署名したが、その後も添い寝の強要や胸を触るといった行為が続いた。 叡敦さんは、当時の苦しい日々を日記にこう書き残している。 「加害者に気持ちを壊される日々が続き、死ぬこと以外に何も考えられない」(2021年5月20日) 「死にたい。ずっと奴隷のように言うことを聞かなければならない。だれも助けてはくれない」(同年5月27日) ▽再び脱出、会見へ 2023年1月、夫ら家族が「叡敦さんが洗脳されている」と気づいた。引き金は、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に関連するニュースが何度も報道されたことという。
説得を受けて寺を再び脱出したが、叡敦さんは「仏さまに見捨てられる」とパニックになり、自殺の衝動に駆られた。 今年1月の記者会見に至るには、後に代理人となる佐藤倫子弁護士との出会いがあった。1年間の協議の末、名前と顔を出して被害を告発し、住職と大僧正の僧籍剥奪を求めることにした。 叡敦さんは力を込める。「これは命をかけた告発だ」 親族であり、『生き仏』と尊敬される大僧正を訴えていいのかと、とてつもない怖さに襲われることもある。住職から受けた暴言は、今でも壊れたカセットテープのように頭の中をぐるぐる回り続けている。医師から「自傷行為」だと指摘されても、毎日髪をそるのを止めることもできない。大僧正が人間だと気付き、洗脳を解くのにもかなりの時間がかかった。 それでも告発をしたのは「14年間存在を消された自分にしてあげられる最大のことだから」。 「2人に正しい処分が下された時に、初めて救われる。起きた事実と苦しみは消せないが、『私はここにいるよ』と確かめさせたい。告発は、私の尊厳回復だ」