「『逆らえば地獄に落ちるぞ』住職にマインドコントロールされ、性暴力を14年間受けた」 口をつぐむ大僧正、真実は…
住職は信仰心を利用し、性加害を加えながらこう言った。 「南無観世音だろー。南無観世音だろー」 「仏さんが、お前にこれ(性行為)が必要だというから、仏さんの代わりに俺がやっているんだ!」 やがて寺に住まわされ、許可のない外出は禁じられた。そして、繰り返しどう喝された。 「仏さまに見捨てられるぞ」 「逆らうと地獄に落ちるぞ」 「俺の言葉は観音さまの言葉だと思え」 逆らうことは到底できなかった。「犬」「ダニ」「歩く性器」、女性器の英語名をもじったあだ名などでも呼ばれて、人間としての尊厳を奪われた。この間、夫は叡敦さんが寺で修行をしていると考えていた。 2010年3月には、「自分の象徴のように大事にしていた」という長い髪を切られた。ショックのあまり、鏡で自分の姿を見ることが4年近くできなかった。 「信仰心を利用してマインドコントロールされ、心理的に監禁された。私という存在が消された」
寺に閉じ込められているため、手紙で大僧正に相談したが、信じてもらえない。「支配され続ける」という以外の選択肢を失った。 ▽告訴は不起訴に 叡敦さんはそれでも、自身が置かれた状況の異常さに少しずつ気がつき、行動を起こした。 2015年、「女性相談センター」に電話で相談。2017年5月には、性暴力を実名告発した伊藤詩織さんの記者会見の様子を偶然テレビで見た。 「衝撃的だった」という。「性暴力の被害者であるのは恥ずかしいことではないのだと知り、力をもらった」 その後、SNSで知り合った支援者の力を借り、17年10月、やっと寺を脱出。民間の支援団体のシェルターで生活を始め、医師からは複雑性PTSDとうつ病と診断された。 2019年には強姦罪で警察に告訴状を提出。迷いと怖さもあったが、一人で告訴することを決めた。ただ、結果は不起訴処分。 「これは仏さまから出された答えなのだ。死ぬしかない」