【インタビュー】日常の些細な発見が愛おしく思える『鈴木康広展 ただいま、発見しています。』が開催中。
目が描かれた葉が舞い降りてくる際にまばたきに見える《まばたきの葉》や、海や川を切り開いているように見える《ファスナーの船》等、日常に潜む小さな“発見”を作品化してきた、アーティスト鈴木康広の個展『ただ今、発見しています。』が二子玉川ライズ スタジオ & ホールにて開催中だ。タイトルの「発見」そして、「発券」に込めた思いを鈴木に聞いた。 【フォトギャラリーを見る】 「ただ今、発見しています」。この展覧会タイトルに聞き覚えはないだろうか。そう、駅で切符を発券する時に券売機から発せられるアナウンスである。アーティストの鈴木康広は、ある時「発券」を「発見」と聞き間違えた。そのエピソードからこの展覧会は始まったと鈴木は言う。 「僕は小さな頃から物分かりが悪くて、いつまでもわからないままずっと過ごしてきました。子どもの頃に感じた違和感や疑問は大人になってもずっと気になり続けていて、それを改めて発見するための道具をつくること、それが作品づくりになっているような気がします。世界をとらえ直すための道具づくりというか。Bunkamuraの方からこの企画を相談された時に、『アートとまだ出会っていない人を対象に、美術の面白さを伝えたい』と言われました。その時に、美術の発見、という言葉が浮かんできて、以前体験した発券機のエピソードを思い出し、“発見”そのものをテーマにしたらいいんじゃないか、という話になりました。 『ただいま発見しています』って、現在進行形ですよね。『発見しました』『発見する』とは言うけど、少し違和感を感じると思います。でも、今、この瞬間にも発見し続けている人はいるはずです。何かに夢中になっている子どもも、実はその子にしかわからない発見をしているけど自分では気づいていない。世界は“発見”に満ちている、ということに展示を通して気づいてもらえたら」
《空気の人》は極薄のプラスチック素材で作られた人である。大きさやポーズは様々あり、2007年に発表されてから、国内外様々な土地で展示されてきた。大きな空気の人はパンパンに膨れているように見えるが、それは常に空気を送り続けているからだ。体の中を空気が循環し、会場へとまた吹き出される。ひじょうに大きな存在感があるが、透明なので圧迫感がない。空気は目に見えないが、人の輪郭を得ることで可視化されているようにも見える。奥のモニターでは、世界各地で空気の人が浮かんでいる様子が映し出されていたが、国によって空気の人の意味がさらに広がるように思える。 《近所の地球 旅の道具》は、鈴木が発見し、それを形にし続けてきた歴史がギュッとひとつのスーツケースに収められたような展示である。キャベツを見て「器」を発見した鈴木が、キャベツの葉1枚1枚を紙粘土で型取った《キャベツの器》や、まばたきに着目した最初の作品である《まばたき眼鏡》、地球の重力を体感できる玩具《りんごのけん玉》等、日々の発見を留めておくように作品化された様々なアイデアが見られる。