【インタビュー】日常の些細な発見が愛おしく思える『鈴木康広展 ただいま、発見しています。』が開催中。
本展覧会では、テーマである“発見”にちなんで新しく制作された《小さな発見機》も展示されている。 「これは、“小さな発見”という普段気づくことがないものを切符として発券する装置です。その時の発券した時刻が秒単位で記録され、僕のこれまで描いたスケッチとともに印刷されて出てくる。スケッチは僕にとっての発見ですが、このスケッチが皆さんにとっての新しい発見のスタートになり、お客さんそれぞれのスケッチに変わっていったらいいなと思います。この作品は有料なのですが、有料であることにも意味があって、お金を払うという体験も含めてしていただけたらと思います」 この小さな発見機には、日々の「発見」を見過ごさないで欲しいという作家の思いが込められている。 「ある時、電車の駅と駅の間って途中下車できないということに気づきました。それは、デジタルで町が刻まれているということでもあり、駅によってまちが規定されているということでもあります。徒歩というのは、1歩、半歩と自由に進んだり止まったりすることができる。極端なことを言うと、1ミリ動いただけで、足を動かさずに体のひねりを変えただけで世界は変わる、そう思いました。自分がふと止まった場所、そこが駅になるのだと思います。いつもと違う場所を歩いてみるとか、人がせわしなく歩いているなかで、ふと立ち止まることの意味を考えました」
展覧会場には、特に一つひとつの作品に説明などはつけられていないが、こうした足跡型のキャプションというかメッセージのようなものがちらほら点在している。作品解説というわけでもない、普段は語っていないちょっとしたエピソードが半透明のシートに書かれている。日々の発見を作品化し、その作品を展示することで新たな発見が得られ、次の作品へと昇華される。他にも「通常は役に立たないけれど、生活の中でふとした瞬間に心によみがえるもの、自分と同じような誰かがいつか必要とするものを探すような感覚で制作しています」等、制作全般にまつわる心の声のような足跡もあった。囁くような作家からの言葉を目にすると、何か新しい発見があるかもしれない。