東京五輪自力出場消滅の伊調はなぜ敗れたのか? 遅れた新ルール対応と川井の冷静な計算とメンタル
レスリングの世界選手権(9月・カザフスタン)の代表の座を争うプレーオフが6日、埼玉県の和光市総合体育館で行われ、女子57キロ級では、五輪4連覇中の伊調馨(35、ALSOK)とリオ五輪63キロ級金メダリストの川井梨紗子(24、ジャパンビバレッジ)が対戦、激闘の末、僅差で伊調が敗れた。ポイントは3-3の同点だったが、ルール上、ビッグポイントを獲得していた川井が優勢となり伊調は涙を飲んだ。川井が世界選手権でメダルを取れば東京五輪代表に内定するため、五輪5連覇を狙う伊調の東京五輪出場の可能性は極めて難しくなった。 伊調はなぜ敗れたのか。両者の勝敗を分けたポイントは何だったのか。ソウル五輪のフリースタイル48キロ級金メダリストの小林孝至氏に、試合映像を見て分析してもらったが、「完全休養したあとに復帰する難しさがあるなか、ここまでの試合をする伊調選手は凄いですね」と、まず敗者の伊調の健闘を称えた。 昨年12月の全日本選手権では伊調が勝ち、今年6月の全日本選抜選手権は川井が雪辱を果たし、決着は、このプレーオフに持ち込まれていた。注目度は高く、日本テレビ系列は、音楽特番『THE MUSIC DAY』の放送枠内で、この試合の生中継を急遽、行ったほど。 試合の前半は息のつまるような攻防だった。川井は第1ピリオドで2回、第2ピリオドでも冒頭から2回、タックルを試みた。しかし伊調が脚を持った川井の腕を振りほどいたり、もつれた末に抜群の身体バランスを駆使してアクロバティックに逃れたりなどしてポイントを失わなかった。 「お互いに積極的に動いていたと思います。今回の川井選手は試合の前半から何度もタックルに入っていましたし、伊調選手もそれに近い動きをし、さらに川井選手のタックルをことごとく防ぎました。彼女の防御はいまも世界トップレベルの水準にあると思います」 小林氏は両者の高い技術を評価した。