「気候危機」で温暖化対策が岐路に立つ中、COP29開催 危機感共有して前進できるか焦点
また、化石燃料活用方針に加えてバイデン政権が進めた電気自動車(EV)の販売促進策などが廃止されれば、自動車によるGHG排出や燃費の規制が緩和され、米国のGHG排出量のうち最も大きな割合を占める輸送部門の排出削減が停滞する。そして米国が現在掲げる排出削減目標(NDC)「2030年までにGHG排出量を2005年比で50~52%削減」の実現可能性は大きく低下する恐れがある。
国際社会の機運に水差す恐れ
気候変動対策などの地球規模の課題は国際協調、国際連携が大前提だ。だが、米国の環境・エネルギー政策の大転換はCOPやパリ協定に代表される温暖化防止の国際枠組みでの合意形成に大きな影響を与え、既に難航している交渉が一層難しくなる可能性がある。
「トランプ大統領復活」によるこうした米国の政策の大転換は、気候変動対策に消極的な国の方針に「言い訳」を与えることにつながりかねず、「気候危機を止めるためには国際社会が1つになるしかない」とする機運に水を差す恐れがある。
ただし、米国の環境・エネルギー政策の大転換は今回のトランプ大統領復活が初めてではない。これまでも民主党、共和党の政権交代の度に世界の地球環境への取り組みは翻弄されてきた。1993年に始まった民主党のクリントン政権は「京都議定書」に署名したが、2001年からの共和党のブッシュ政権は離脱。しかし、2009年に誕生した民主党のオバマ政権は再エネ関連予算を大幅に増額するなど、再び気候変動対策に積極姿勢を見せて2015年にはパリ協定に合意している。 この間も1995年から年1回開催されてきたCOPは回を重ね、2015年にフランス・パリで開かれたCOP21では京都議定書に代わり、パリ協定が成立。少しずつ気候変動対策は進んできた。
求められる社会・経済構造の大転換
国際情勢に目を向けると、2022年に始まったロシアのウクライナ侵攻から始まった戦争状態は今も続く。中東のパレスチナ自治区では、昨年10月のイスラム組織ハマスによるイスラエル国内での攻撃から始まったハマスとイスラエルの戦闘も収まる気配がない。今回の米大統領選挙のような一国内の分断の傾向は欧州でも起きている。