「鍵を開けて入ってくる人がいる」「敵を追い出す!」と玄関に座り続ける義母。知っておいて!「妄想」も認知症の症状のひとつなんです
こんにちは。神奈川県在住、フリーライターの小林真由美です。ここ数年のマイテーマは「介護」。取材でも高齢者にまつわること(介護のほか、終活や相続・遺言など)に関わる機会が増えてきましたが、どこか他人事でした。それがしっかり「自分事」になった途端、驚くほど冷静さを失ってしまったのです。 2年前、我が家の近所(高齢者専用住宅)に越してきた義母。当初は新しい住まいを気に入り楽しそうに過ごしていましたが、すぐに認知症の症状が進行し始めます。 【アラフィフライターの介護体験記】#4
「監視カメラで見られてる!」一気に加速する義母の妄想
田舎で暮らしていた頃は、「温泉好き」だったお義母さん。新しい住まいでも、最初は「お風呂場が綺麗でいいわね~」とうれしそうに言っていましたが、徐々に入浴や洗髪を拒否し、「お風呂は毎日入ってる」と嘘をつくように。その後、夫が時間をかけてお義母さんの“ホンネ”に迫ったところ、「お風呂に入らなかった理由」が分かってきました。
【義母がお風呂に入らなかった理由】 1.シャワーの使い方、お風呂の沸かし方が分からなくなった 2.浴室の雰囲気が怖かった(特に壁の色) 3.浴室に監視カメラが付いていると思っていた 3.については、24時間コールセンターにつながる「通報装置」を「監視カメラ」だと思い込み、「だってお風呂に入ってる様子も見られてるんでしょ。そんなの恥ずかしいじゃない!」と言って、激しく拒否。
さらに入浴以外にも「監視カメラで見られてる!」と、部屋の中央に置いてあったテーブルを隅の方へ移動させ(ここなら映らないという判断)、日中もカーテンを閉め、家の中でも落ち着かないようになりました。 恐らく、お義母さんにとって生まれて初めて目にする「通報装置」たるものは、“恐怖の物体”だったに違いありません。幾度となく「これは監視カメラじゃないよ」と伝えても、一度植え付けられた「負の記憶」が消えることはなく……。 ところが後日、お義母さんから元気な声で連絡がありました。 義母:「(マンションの)1階でお会いした方が親切でねぇ、『何か困ってることはありますか?』って言うから、カメラのことを聞いてみたの。そうしたら、『静かにしていれば、カメラに映らないから大丈夫!』って教えてくれたのよ。だから、できるだけ音を立てないように気をつけてるの」 夫:「……」 この“1階でお会いした方”については、その後も特定することができず、実際にそんな会話があったことすら、いまだに謎のまま。そしてこれ以降、お義母さんは音に対して敏感になり、「くれぐれも、部屋の中では静かにして!」とお願いされるようになりました。