「トンネルの先に光は見えている」尾身会長が語る検査とワクチン
新型コロナウイルスの全国的な感染拡大と変異株の急速な置き換わりを受け、政府は14日、緊急事態宣言の対象に北海道と広島、岡山県を追加することを決めた。政府のコロナ対策分科会の尾身茂会長は記者会見で、ワクチン接種と検査体制の整備によって「少しずつ普通の生活に戻れる環境ができつつある」と前向きな見方を示し、国民に協力を求めた。今夏に予定される東京五輪をめぐる感染症のプロとしての考えも語った。 【会見動画】尾身会長「トンネルの先に光は見えている」3道県を「宣言」追加へ
「あと数か月」「何とか低空飛行で」
緊急事態宣言に北海道など3道県が追加されることが決まった14日夜、尾身会長は「トンネルの先に光は見えている」と語った。 強調したのはワクチンと検査だ。政府はワクチンについて、7月末までに高齢者の接種を完了させる目標を掲げている。検査についても、抗原検査の簡易キットを今月中旬をめどに最大800万回分確保し、医療機関や高齢者施設に配布を進める方針を示す。抗原検査は「いま体内にウイルスがいるか」を調べる検査で短時間で判定結果が出る。 ワクチン接種と検査の拡大が進むことを前提に「やっと人々が少しずつ普通の生活に戻れる環境ができつつある」と前向きに話した。 そのためにも「検査とワクチンがみんなに行き渡るまで、(感染者数は)何とか低空飛行で」推移することが重要だと指摘。「(現在の状況が)あと1年続くわけではない。あと数か月」と国民に協力を訴えた。 宣言はすぐに解除したいという「誘惑に駆られる」(尾身会長)ものだが、「そこを我慢することが結果的には医療の崩壊を起こさないで次の光(ワクチンと検査)につながる」と慎重な判断を求めた。
“従来とは違うウイルス”
16日からは緊急事態宣言が9都道府県、まん延防止等重点措置は10県に拡大し、計19都道府県で新型コロナの特別措置法に基づく強い感染対策が取られることになる。しかし、新規感染者数の増加には依然として歯止めがかかっていない。 その要因の一つには変異株の急拡大がある。尾身会長は実際にコロナ患者を診察している臨床医師の感覚をこう紹介した。 「これは従来とは違うウイルスだと。もちろん生物学的にはコロナウイルスと一緒だが、そういう危機感を持っている」 その理由は「感染のスピードが非常に早い」こと。さらに「早いだけならいいが、その結果何が起こるかと言うと、あっという間に医療のひっ迫(が起こる)」だと説明した。