運転が好きになる小型車「スズキ スイフト」
最初はやや固く感じられた乗り心地も速度を上げるとスムーズになり、120㎞/hとなった高速道においてもフラットで安定している。この感じはどこかにあったなぁ、と記憶の糸を手繰ってみると、どことなくゴルフⅡに似ていると感じたのは、ちょっとほめすぎだろうか。
あまりにそんな第一印象がよかったため、結局今回は高速道路も山坂道も必要以上に走りまくってしまい、ざっと1000㎞ほどをスイフトと過ごすことになった。その間には5人の大柄な男性を乗せ、荷物満載で結構な距離を走るという過酷な状況もあったのだが、結論から言えば感心し、タイシタものだという言葉が浮かぶばかりで、不満が感じられることはなかった。容赦ない走り方でも総平均で21.8km/lとなった燃費も含め、日本の路上において「普通の」スイフトで足りない場面はほぼないと思う。 もちろん世の中に完璧な自動車など存在しないから、詳細に重箱の隅をつつけばいくつか気になる部分も存在する。例えば、リアシートの形状は実にそっけなく、座り心地もいたって普通である。レッグルームもヘッドクリアランスも十分以上だし、リアのサイドウインドーも下がりきるというのにちょっとこれはもったいない。また、リアシートの上部にはランプもないため夜は真っ暗だったり、正直言うと低速時の乗り心地は特にリアシートでやや荒くもうちょっと乗員に優しいシートであったならば、とは思った。この部分ではライバルのフィットのほうがはるかに上質で広いし、スペーユーティリティーもスイフトをしのいでいる。だがそれは2台を比較すればの話であって、そもそもスイフトとフィットでは狙っているベクトルはやや違う方向だと思うし、あと少しの改善と配慮でスイフトのリヤスペースはより快適なものに改善できるとも思う。スペース自体は広いのだから。
現在、世の中ではスイフトスポーツのスクープ話ばかりが盛り上がっており、遠くない未来に発表されそうな雲行きではある。もちろんスイスポの存在も気にはなるし、乗ってみたい気持ちも期待も高まることは事実ではあるが、それはなによりこの基本となるモデルが、しっかりとしているからこそ、であることは言うまでもない。個人的にはベーシックな小型車が大好きだから、スポーツではない、普通のモデルのスイフトをあえて毎日の友に選ぶこともおすすめしたいし、その場合中間グレードMXに存在するマニュアルトランスミッションなども、なかなか通なチョイスなのではないだろうか。 なんていうことのない小さな実用車なのに乗って楽しく、どこまでも頑張ってくれるこの感じは、前述のようにちょっと昔のヨーロッパ車のようでもあった。それはやや褒めすぎかもしれないがゴルフⅡのようでもあったし、プジョー205のGTIではなくXSとか、フィアット プントセレクタあたりのあの感じでもあり、そういう昔のヨーロッパには掃いて捨てるほどあったあのベーシックで「普通にイイ感じ」の小型車がスイフトである。そしてそういうのを知っている方にもぜひお薦めしたいし、生活自動車として、長年付き合うことのできる普通の足を探している方にもぜひおすすめしたい。自動車の運転とは楽しいものであるということを、多くの人に感じていただきたいからこの車を心から推薦する次第である。