運転が好きになる小型車「スズキ スイフト」
さらにその上のエアコンコントローラーもタッチパネルではなく物理的なスイッチだし、メーターパネルにも液晶ディスプレーではなく、水温計も燃料計にもちゃんとしたプラスチックの針が並ぶ。針の形がもうちょっと繊細だったらBMWあたりに移植してあげたいような設えだが、自動車にとって物理的でブラインドタッチができるスイッチ類や、反時計回りではないメーターがどれだけ大切か、今さら言うまでもないだろう。
時代遅れかもしれないし、保守的な考えかもしれないが安全やユニバーサルなデザインという観点から考えた場合、僕はこちらの方向性を100パーセント支持する。そしてそれは最初のカタログの一件ともつながるのではないだろうか。
さて今度のスイフトの誉め言葉に、よく「普通にイイ車である」という表記が用いられることが多い。まあ一度乗ってみればその言葉の意図するところは良く分かるのだが、果たして普通とはなんだろうかと思いながら新橋の路上を走り始めた瞬間、その言葉の意図することが分かった。 パリッと糊のきいたようなしっかりした剛性感を感じながらも、どこかふわっと優しく軽いこの乗り心地、そしてどこにもいい加減さや緩さの感じられないしっかり感。このクラスの他社のライバルに多く見受けられる、どことなく薄く頼りなく、ペラペラな感じがこの車にはない。そんな他社のベーシックカーに乗るたびに、こんな車に乗せられていては運転が嫌いになっちゃうよなぁ、というあの感じがスイフトにはない。井門さんの「開発した担当者は運転大好きな人なんですよ」という言葉を思い出した。
1.2リッターマイルドハイブリッドに今回はCVTが組み合わされた、二輪駆動モデルだったが、CVTにありがちなエンジン回転だけが先行して上がってしまうような不自然なしつけもなく、極めて自然体にドライバーの意図する加減速をしていくことが実に心地よい。新開発3気筒Z12Eマイルドハイブリッドは、発進時にアシストを感じないほどマイルドな効きではあるが、そこは950㎏という車重の軽さが作用し、アシストなどなくとも十分に街中で力強く軽快に走ることができる。それにしてもマツダ ロードスターでさえ990㎏を維持できず1トンを超えたことが話題になっているというのに、こちらはドアが2枚多く、屋根もついているというのにどうしてこれほど軽く作れているのか、一度開発者に聞いてみたいほどではある。