4月から国家資格化の日本語教師、薄給と激務、非正規雇用、高齢化の実態 #生活危機
地域の日本語教室は置き去りに
新制度が対象とするのは、あくまで日本語学校とそこで働く教師のみ。しかし前述の通り、日本語教師は半数が地域の日本語教室などで教えるボランティアだ。こうした日本語教室で学ぶのは、親や夫の仕事の都合で日本に来たばかりの妻子や、日本語を学ぶ場の乏しい技能実習生といった人々。近所や職場の日本人とコミュニケーションがとれない、役所からの通知がなんだかわからない……いますぐ「参照枠」に基づいた実践的学びが必要な現場だ。 「そこが置いていかれているという実感を持っています」と語るのは、跡見学園女子大学で日本語教育について教える斎藤敬太さん。 「当初は、地域の日本語教室についても法整備するという話だったのですが」 こうした場で教える日本語教師は、国家資格を取得する必要はない。しかし、まずはここにしっかりした教育制度をつくってほしかったと語る声は取材中さまざまな人から聞いた。日本語教室が日本人とのただひとつの接点、という外国人も多いのだ。生活相談の窓口にもなっている。自治体も日本語教室を通じて外国人コミュニティーの情報を得ていたりする。現状ではボランティアの熱意によって支えられている。
日本語教師という仕事は、誇りを持っていいんじゃないか
新制度の影響は、日本語教師を養成する学校でも大きい。 「これからは、もっと会話ベースの教え方ができる先生を育てるカリキュラムに変えていかなきゃならないと思います」 そう話すのはKEC日本語学院新宿校の所長、関大輔さん。国内外で活躍するたくさんの日本語教師が輩出してきた学校だ。新制度は経過措置の期間があるため、当面は国家資格を取得するためのコースと、420時間の日本語教師養成講座を同時に運営しなくてはならないという。 卒業生や受講生からも、国家資格についての問い合わせが多い。過去に修了した講座や、いま学んでいることが無駄になってしまうのではないかという不安を抱えている人もいる。その都度、経過措置などの説明をする。