4月から国家資格化の日本語教師、薄給と激務、非正規雇用、高齢化の実態 #生活危機
こうした日本語教師をめぐる諸問題が解決されないまま、待遇が上がるわけでもなく、立場だけは国家資格となる。 「国家資格というなら、教師たちが質の高い教育サービスを提供できて、長く続けられる環境をまずつくってほしい。現状では若い人が新卒で入ってこない、目指せない仕事です。家族を食べさせていけないので」 そんな業界が、いわば「移民社会の最前線」を担うのだ。
文科省への移管で、日本語教育がダブルスタンダードに?
今回の措置は、日本語教師が国家資格になるだけではない。まず日本語学校の管轄が、法務省(入管=出入国在留管理庁)から文部科学省に移った。そして日本語学校は新たに文科省から認定を受けなくてはならない。認定を受けた学校で働けるのは「登録日本語教員」のみになる、というわけだ。 チェックがより厳しくなるが、これについては歓迎の声も大きい。「あやしげな日本語学校が淘汰されるから」というものだ。 たとえば、きちんとした授業をせず、日本語習得ではなくアルバイト目的の留学生を集めているような学校だ。工場や介護施設などと提携し、留学生をアルバイトとしてあっせんする日本語学校の中には、ひどい待遇で働かせたり、給料の一部が学校側に還流したりするようなところもある。そうした学校を減らしていくのが文科省の目的のひとつといわれる。 また日本語学校のカリキュラムには「日本語教育の参照枠」なる枠組みが導入される。外国人に日本語を教えるすべての人が参照できる学習体系、アウトラインのようなもので、今後はこれをもとに日本語学校は授業を組んでいくことになる。
大きく変わるのは、文法ベースではなくタスクベースの教え方になるということ。Yさんが解説する。 「たとえば、『友達と一緒に映画に行きたい』というシチュエーションがあったとします。それを『~しませんか?』という文法を使って表現してください、と出題していたのが従来の授業です」 この場合、正解は「私と一緒に映画に行きませんか?」だろうか。しかし「参照枠」導入後は、正解はない。友達を映画に誘えればそれでいいのだ。 「タスクをクリアできれば、学習目標は達成なんです」 これを「行動中心アプローチ」という。テスト対策の授業ではなく、この国でどう暮らしていくのか、より実践的でコミュニケーション重視の日本語を教えていくことになる。生活者としての外国人がさらに増加していくことを見込んだもので、時代に即したよい方向性だと現役の教師たちは評価する。