4月から国家資格化の日本語教師、薄給と激務、非正規雇用、高齢化の実態 #生活危機
この4月から、外国人に日本語を教える「日本語教師」が国家資格となった。急増する外国人にこの国になじんでもらうためにも、国家資格化で日本語教育の質を向上させる狙いがあるという。しかし現役の日本語教師や日本語学校からは、戸惑いの声も。もともと薄給かつ非正規雇用が多い中で、国家資格取得という新たなハードルが加わるからだ。また、日本語教師の半数近くを占めるボランティアに支えられている日本語教育の業界が、国家資格化で変化するのか。国の「移民政策」による負担がさらに増すだけではないか……現場を訪ね歩くと、そんな懸念も聞こえてきた。(取材・文:室橋裕和/撮影:殿村誠士/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
国家資格化で、むしろ教師の数が減る?
「ようやく社会的な地位が得られる。30年来の悲願でしたからね」 そう語るのは、1987年創立の老舗、カイ日本語スクール代表の山本弘子さん。日本社会で活躍する留学生がたくさん輩出してきた同校だが、日本語教師がやっと国家資格として認められるという感慨は大きいようだ。 これはほかの日本語学校でも聞かれたことで、「一定の公益性がある、国益に資する職業として認知された」と喜ぶ人は多い。 いままでは公的な資格は必要のない職業だったのだ。 従来、日本語教師になるには以下の3つのルートがあった。 ・文化庁のガイドラインに則った420時間の日本語教師養成講座を修了 ・日本語教育能力検定試験に合格(公益財団法人 日本国際教育支援協会が主催) ・大学や大学院の日本語教育専攻を修了
このいずれか、あるいは複数を満たしていることを、日本語教師採用の条件とする日本語学校が多かった。もっとも、前記の3ルートを通らず独学でスキルを向上させ、教師として活躍している人もいる。おもに制度が整っていなかった時代から教壇に立っているベテランだ。 それが国家資格化で大きく変わる。 国家試験に合格し、研修機関での教育実習を修了することで、国家資格「登録日本語教員」を取得できるようになる。 この新しいハードルは、現役の日本語教師たちもクリアする必要がある。とはいえ、それぞれのキャリアに応じて一部の試験や研修が免除になる仕組みだ。5~9年の経過措置期間があり、その間に身の振り方を決める……のだが、 「(日本語教師は)もういいかな、と考える人が多いのではと懸念しています」と山本さんは語る。日本語教師は50代以上が全体の約5割を占め、「高齢化」が著しい。