”真の世界最強”称号獲得へ…井上尚弥が覚悟の渡米「人々を熱狂させる試合をする」
無観客試合への不安も消えた。 「トップランク社のイベントの会場は映像でチェックしたし、きょうもロマチェンコの試合は見ましたから。自分が心配していたのは後楽園ホールでの無観客状態。ラスベガスはそうではなかったので。ライティングもあるし人の声もある。問題はない」 ジムの練習では、これまで流していた音楽を消して無音状態にし、井上が練習する時間帯には、他のプロ、練習生の立ち入りを禁止。「音楽がないだけで、まるっきり雰囲気が変わる」(大橋会長)と無観客に近い状態を作ってきた。 さいたまスーパーアリーナで2万人を超える観客の前で戦ったドネア戦とのギャップが心配だったが、無観客でも集中力を保つ免疫はできた。 現地では、新型コロナの感染予防対策で自由に外出ができないなど行動に制限が加えられるが、「不安はない。ロサンゼルスでもグラスゴーでも試合をして、海外での試合に関してはまったくといっていいほど不安はないです。ただ、ホテルから出られない点がどうかなというぐらい。全体的に見れば楽しみの方が多いですよ」と断言した。 精神状態を安定させるため、気心の知れた従兄弟の井上浩樹も、この日、同じ飛行機で渡米した。グラスゴーでも、拓真、浩樹と、テレビゲームでの対戦で時間を忘れ、部屋で一人になれば、ネットフリックスのドラマを見て過ごしていた。 今回の試合のファイトマネーは100万ドル(約1億500万円)。米メディアによると、この日、世界ライト級タイトルの4団体統一に失敗したロマチェンコの無観客試合のファイトマネーが325万ドル(約3億4000万円)だから、軽量級の井上に対する、この値段が、いかに破格かがわかる。 大橋会長は「これは夢へのスタート」と代弁した。 無観客だが、ラスベガス初上陸のこの試合は、全米にESPNでオンエアされ井上の査定試合という側面もある。モンスターらしい結果だけでなく内容も求められる。 「そこを追い求めたらきりがないけれど、圧倒的な強さを見せるなら前半KOが理想。でも、そこにこだわらず、まずは勝ちに徹して、そのなかから自分がやれる勝ち方、倒し方というのを出していこうかなと」 1ラウンド決着へのこだわりはない。 だが、「チャンスがあれば行きますよ」と頼もしい。それが井上スタイルだ。