文科系部活の最大派閥「吹奏楽部」がいま抱えている「深刻な悩み」…それでも「吹部が好き!」顧問&部員が「好成績を残せたワケ」
吹奏楽部の「教員の残業」問題
また、顧問や現役部員が頭を下げて地域をまわることも多く、中には未成年なのに熟年サラリーマンのような営業スキルで、寄付や優遇(トラック代の割引など)を勝ち取ってくる吹奏楽部員や、給料が出る訳でもないのに働くOBもいたりする。 しかし、どうしても野球やサッカーより寄付が集まりづらく、学校によっては「野球応援のため」として楽器購入に至る場合も。一方で、双方の縁が深い学校では、野球部OBの方の企業が吹奏楽部のコンサートに広告を出してくれるなど、見事にギブアンドテイクの関係が完成している場合まである。 台所事情は学校・団体それぞれ。こういった部活運営のノウハウは、もっと共有された方が良いだろう。 「働き方改革」による指導者の確保も問題となっている。教職員に適用される「給特法」は、給与に調整額が上乗せされる代わりに平日の残業代が出ず、休日の「部活手当」も、時給換算で1000円台といったところ。吹奏楽部に限らず、活発な部活動は、この待遇にもかかわらず、生徒のために汗を流す教職員に支えられている。 吹奏楽部は経験者が多い分、「笑ってコラえて!」で有名になった淀川工科高校・丸谷明夫先生(もともと電気科の教諭)のように、音楽教師でなくても指導できる教員も多い。さまざまな先生方の頑張りやマンパワーが部活の支えに…過度に頼ってはいけない。顧問の先生も人間なので、一定の負担軽減策は必要だ。 近年は、外部からの地域指導員を呼ぶ場合もあるが、待遇が必ずしも十分ではない(例:横浜市 は「基本1週間当たり1~4日、1日2時間程度 時給1840円」)。吹奏楽部に限らず、「先生に負担をかけない部活指導の確立」「待遇や労働環境の向上」を考えなければいけない。
吹奏楽部で身につく「社会で使える実戦スキル」
こうして振り返ると、吹奏楽部は父兄の負担も大きく、子どもを入部させようか迷う方も多いだろう。しかし、「中・高での吹奏楽部入部はメリットが大きい!」と、筆者は断言する。 吹奏楽経験では「クラス別・男女別」だけでないコミュニティスキルが磨かれ、体育会系・文科系双方のマインドを持てる。かつ対外的な活動の多さから社会性やマナー、集客のために観客のニーズを読む力、ステージ経験から精神面や度胸も磨かれる。 さらに、資金面などで早くから大人の理屈に付き合うため、社会ですぐ役に立つコスト意識、陰で支える支援者への気配りが身につく。吹奏楽経験で得られるのは音楽の知識、根性やコミュニティスキルだけでなく、社会人として「マーケティング」「マネジメント」「戦略立案」に活かせるような経験ができてしまうのだ。 参考までに、「知らない人と会話すると、緊張で翌日に発熱」という極度の“コミュ障”が、吹奏楽部で徐々にスキルを身につけ、会社員として営業部の管理職を全うした、筆者のような事例もある。 吹奏楽経験は最高に楽しいだけでなく、「リアルに役に立つ!入部して&子供を入部させて損はない!」と、声を大にして言わせていただきたい。 【さらに詳しく】『全国で音楽ホールの改修・長期閉館が相次ぐ事態に…!「吹奏楽大国」日本がいま直面している「厳しい現実」』
宮武 和多哉(ライター)
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