文科系部活の最大派閥「吹奏楽部」がいま抱えている「深刻な悩み」…それでも「吹部が好き!」顧問&部員が「好成績を残せたワケ」
2校合同とは思えない一体感
2つの学校は、距離にして4kmほど。互いの学校を行き来することで練習時間は減るが、美幌町の場合は2校のちょうど中間地点に音楽ホール「びほーる」があり、リハーサルなどに活用できたという。 美幌町は子供から大人まで昔から吹奏楽が盛んな土地柄で、昨年には「全日本小学生バンドフェスティバル」全国大会金賞を受賞した美幌小・東陽小合同の金管バンドもあり、中学が離れているといっても、もともと同じバンドだったメンバーも多かったとのこと。合同バンド結成の素地はあったと言えるだろう。 合同バンドは双方の先生が指導を分担、美幌中の櫻井恵教諭の指揮でA編成に出場した。なお「コンクールを聴くために全国を飛び回る吹奏楽愛好家」数人(筆者、音大卒の弟含む)で実際に拝聴したが、課題曲「勇気の旗を掲げて」冒頭3小節目、局の最初のハーモニーが驚くほどしっかり決まっていた。 また、要所で旋律が歌い込まれた音楽づくりに引き込まれ…2校合同とは思えない一体感のある演奏で、全員が後から「いいバンド見つけた!」と意見が一致した好演であった。 全国大会には進めなかったが、旭川・札幌・函館などに全国レベルの実力校が点在する北海道で、A編成の金賞(今年は16団体中6団体。うち代表は2団体)は、相当な快挙だ。A編成に出場すると東日本大会への出場はできないが、単独出場ではなし得ない大人数でのサウンド作りは、充実した体験だったという。現在のところ、2校と教育委員会の調整が叶えば、来年以降も合同バンドでの出場を考えているそうだ。 なお2024年のコンクールでは、「中学生の部」で合同バンド6団体が県などの代表として各支部の大会に進み、うち「浜の宮中学校・中部中学校」(いずれも兵庫県加古川市)が関西代表として、合同バンド初の全国大会出場を果たす。少子化を見据えた制度改定が、さっそく実を結んだと言えるだろう。
吹奏楽部の「資金調達」問題
吹奏楽部の運営には、資金確保、指導者確保など、少子化以外にもさまざまな苦労がつきまとう(『響け~』での北宇治高校吹奏楽部の何気ない演奏の影にも、こういった苦労はあるはず)。リアルな実情を見てみよう。 まず吹奏楽部には、楽器が必要だ。学校によって違うとはいえ、自前での楽器購入が約3割、その場合は「平均30万3983円」の費用がかかっているという。各校で使用される楽器は良心的な価格設定ではあるが、それでも「平均24万4480円(新品購入の場合)」となっている(2020年・マーケットエンターブライズ 「吹奏楽部の活動に関する実態調査」より)。 なお参考までに、筆者は当初、学校備品を使用していたものの、高校2年で楽器(テナートロンボーン)を購入。14万5000円の資金は、ふつうに労働(朝練習前の牛乳配達)で調達した。 運営する側の資金力も必要だ。文化庁資料によると、標準的な吹奏楽部の活動費用は「バス代6万円×3回」「トラック3万円×4回」など、総計87万5000円。 一方で収入は1人1000円程度の部費と、年額10万円程度の学校予算。収支はそうそう合わず、赤字を埋めるために対外演奏(町のイベント、結婚式場など)で謝礼を稼いだり、定期演奏会のパンフレットで広告を募ったり、寄付を集めたり、さまざまな資金調達が行われる。
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