繰り返されるAIブームの浮き沈み、「AIの冬」の再来を避けるために必要なこと
最近、AI(人工知能)ブームは終わったというニュースが続いている。ワシントン・ポストは4月に「AIブームはしぼみつつある。これからが正念場だ」と報じ、フィナンシャル・タイムズは7月に「AIブームはドットコムバブルの完全な再現ではないが、アレンジされたものだ」と論じた。また、ニューヨーク・タイムズのポッドキャストでは8月に「グーグルの莫大な資金はAIバブルの崩壊を招くのか?」というテーマが取り上げられた。 しかし、AIブームの浮き沈みは、実のところ目新しいものではない。数十年にわたって繰り返されてきたのである。 マサチューセッツ工科大学(MIT)スローン経営大学院のITシニアレクチャラーのポール・マクドナー=スミスは「AI技術は今日の技術革新の最先端にあるものですが、1950年代から今日まで、大きな成果と過剰な期待という特徴を持つ分野なのです」と語る。 マクドナー=スミスは次のように続ける、「1950年代にAIが機械処理に知能を注入する方法として初めて考案されて以来、アラン・チューリング、スタンフォード大学のジョン・マッカーシー、MITのマービン・ミンスキーなどのAIのパイオニアたちが高い期待を抱かせました。しかし、それらの期待は後に1970年代から80年代のAI冬の時代で冷え込んだのです」 その最初の「AIの冬」で、「計算能力とデータの不足が、理論的な可能性と実際の応用の間に大きな隔たりを生み出して、その結果、投資は減少しAIに対する懐疑的な見方が広がったのです」 1980年代に開発された機械学習は、AIに再び勢いを与えた。「計算能力の向上とデジタルデータの増加によって、AIアプリケーションはエキスパートシステムや自然言語処理などの分野に拡大しました。これらの技術は、1990年代から2000年代初頭にかけて進化して、ニューラルネットワークの進歩によってAIの能力とパフォーマンスが飛躍的に向上し、深層学習(ディープラーニング)への道が開かれました。深層学習は、コンピュータビジョン、自然言語理解、複雑な意思決定プロセスなどのタスクにおいてAIの能力を飛躍的に高めたのです」と彼は続ける。