繰り返されるAIブームの浮き沈み、「AIの冬」の再来を避けるために必要なこと
「AIの冬」の再来を避けるためのラストマイルエンジニアリング
結局のところ、「AIが過大評価されているのか、それとも期待に応えているのかという問題は、過去70年から80年の間、常に議論されてきたのです」と彼はいう。 「AIの冬」の再来を避けるためには、機械と人間の能力のギャップ、いわゆる「ラストマイル」を埋めることが必要だ。「AIの潜在能力を人間の創造力、好奇心、批判的思考、そして思いやりなどの能力と結び付けて持続可能なビジネス価値に変換する『ラストマイル・エンジニアリング』の適用が鍵となるでしょう」 また、データの質と可用性も、AIがその約束を果たす上での大きな課題だ。マクドナー=スミスは「AIシステムは、訓練に使われるデータの質に根本的に依存している」と指摘する。「多くの企業が、データの分断、フォーマットの不一致、そして地理的および法的な管轄を超えた複雑なプライバシー問題に悩んでいます」 さらに、「AIとデータサイエンスに精通した専門家が不足していることに加え、AIの潜在能力をビジネスインパクトに変換するための創造的なスキルを持つ人材の不足も深刻な課題です」と彼は指摘する。 これらの課題に対処するために「企業のリーダーは、自分自身と自分のビジネスに3つのシンプルな質問を投げかける必要があります。すなわち、自社のエンタープライズデータ戦略は何か? 自社のエンタープライズ人材戦略は何か? 自社のエンタープライズAI戦略は何か? という質問です」 マクドナー=スミスは「データを取得する高速な実験を行い、そのデータを基によりじっくりと、長期的な戦略的なAIの適用を調査して実装する、『デュアルスピード・アプローチAI戦略』」を提唱している。なお、彼がここでいう長期的な期間とは、少なくとも18~24カ月を指す。 「今日、AIで最も先行している企業は、データの整合性とコンプライアンスを確保するための強力なリーダーシップに率いられた、堅牢なデータガバナンスフレームワークに投資することの価値を認識しています」と彼は続けた。「これらの企業はまた、今後1年、3年、5年の間に見られる計算能力の指数関数的な成長の意味を理解しようと努めています。(成功する企業は)深層学習や生成AIなどのAI技術と、クラウドやエッジなどのコンピューティング能力を組み合わせ、ビジネスモデルの革新とビジネス方法の再調整の機会を生み出す、複合的なイノベーションを採用しているのです」
Joe McKendrick