「世界のホンダ」の基礎を作った初代「アコード」は、間違いなく日本が産んだ名車の1台だ
素直でコントロールしやすいクルマは、多くから拍手で迎えられ、賞賛もされる。でも、ジャジャ馬に手を焼きながらも、それをコントロールすることに喜びを感じる人もいる。 僕は素直なクルマもジャジャ馬も、どちらも好き。だから、前者には「これはいいです!!」と素直に勧める。 一方、後者には「あれこれ厳しい注文をつけた上で」、、それが、ミニクーパーSのような楽しいキャラであれば、「ちょっと厄介ですけど楽しいですよ!!!このクルマ」といった勧め方をする。 アコード3ドア HBは、どこから見ても「優等生キャラ」。でも、退屈などしないし、とても魅力的だ。 すでに触れた「全体にバランスの取れた、スタイリッシュなルックス」がひとつの理由だが、加えて、優れた乗り味、走り味がもたらす魅力にも惹かれる。
アコード 3ドアHBの乗り味は、当時の小型車の水準を確実に超えていた。とはいっても、ソフトで優しい、、といった類の乗り心地ではない。 しっかりした、そして軽快なタッチで路面の不整をクリア。前後のバランスもよく、不快な揺れが尾を引くといったようなこともほとんどなかったと記憶している。 ステアリングはスムースで、フロントの応答も、リアの追従もいい。 それに、ちょっとしたミスならクルマがうまく飲み込んで消化し、何事もなかったように丸め込んでもくれる。 追い込んでもアンダーは滑らかに、アクセルを緩めてもタックインは滑らかに、、、ブレーキングドリフトも思いのままに決まる。 クルマの姿勢も姿勢の変化も安定している。なので、慌てさせられたり、ドキッとさせられたりしてドライビングを乱す、、、といったこともない。
コーナーの絶対速度はとくに速くはないものの、とにかくバランスが良く、急激な変化もないので運転しやすく、結果としてアベレージも高くなる。 とくに、タイトなコーナーの続く下りのワインディングロード辺りでは、下手なスポーツ車を置き去りにするようなアベレージで走り抜けられた。 たぶん、外から見ていてもあまり速くは見えないだろう。だが、全体バランスの良さが引き出すアベレージスピードは高かった。 アコード 3ドア HBは、1976年のモーターファン COTY(現在のCOTYの前身)でイヤーカーの座を獲得した。当然の結果だった。 当時、僕はCOTY最年少審査委員だったが、工科系大学教授を中心に、日本の自動車工学界を牽引なさっていた方々の間に、「走り屋小僧が1人紛れ込んだ」という感じだった。