「監査役会設置会社」「指名委員会等設置会社」「監査等委員会設置会社」…曖昧さの残る仕組みは本当に機能するのか
八田 そこなんです。後継者の指名に関与する指名委員を社外取締役に任せるのですから、これは私が社長でも納得がいきません。だからなんでしょう、創設されてから20年になろうというのに、いまだに上場企業約3800社のうち、導入企業が100社に満たない。 それで困って今度は、監査等委員会設置会社が出現した。これがまたおかしな仕組みで、監査等委員の取締役は任期が2年なのに、それ以外の取締役は1年とか、“等”は何かというと「監督もしろ」という意味なんですね。 斉藤 「監査」は業務の適法性をチェックするだけですが、「監督」は業務の妥当性も検証する。監督は取締役の職務であって、監査等委員だけの職務ではないはずですからね。 八田 ワケがわかりませんから、大学の講義でもすごく教えづらい。こんな仕組みで本当にガバナンスは機能するのでしょうか。 斉藤 かつて経団連は社外取締役の義務化に強烈に反対していて、その理由が「(社外取の)なり手がいない、確保できない」だったわけでしょう? だから、落としどころを行政が見つけたということでしょう。 監査役会設置会社から監査等委員会設置会社に移行する分には、社外監査役をそのまま監査等委員にしてしまえば済むことで、実質的に社外取締役の増員にはならないですからね。 何か摩擦や衝突があると、足して2で割ったようなところに落とし、結果、あいまいなルールになってしまうということを、日本はありとあらゆる場面で繰り返しています。だから、効率性も落ちる。 ルールを変更すると、そのルールに適応できない人が当然出てくるわけですが、適応できない人を適応できるように修正するということをせず、放置してしまう。戦前の日本はそうじゃなかったと思うんですよね。 石橋湛山(元首相、ジャーナリスト)の論文なんかを読んでみると、非常に明快に色々なことを言っています。よく戦時中に、軍の圧力のもとであれだけの発言ができたなと感心します。 八田 今の日本は自由な発言を許さない社会になっている感がありますね。 斉藤 何となくホワっとしてるほうが日本人のメンタリティだと生きやすいのでしょう。でも、このツケを日本人は必ず20年後、30年後に嫌と言うほど払わされると心配でなりません。
八田 進二