科学者・中村桂子 ウイルスと付き合っていくのなら<生きものの歴史を踏まえた生き方>を進むしかない。新型コロナパンデミックが教えてくれたこと
◆40億年について考える ウイルスが誕生してから今日までの40億年についてよく考え、そこから学びながらウイルスとの付き合い方を考える必要があります。 46億年の地球の歴史のなかで、RNAワールドから現在のシステムに移行するまでの間に行われた生命誕生へ向けてのいろいろな試みに、ウイルスも関わったはずです。 その中でたまたま生まれたDNAをもとにした細胞が現存の生きものまで40億年続いてきたわけであり、そこにはウイルスが常に関わってきました。 40億年続いたという事実が、生命を支えるシステムの見事さを示しています。
◆ウイルスと付き合いながら生きる方法 このシステムがあったからこそ、私たちもここにいるわけですから、そのことを前提に生き方を考えなければいけないはずですのに、現代社会は自然離れをすることを進歩としてきました。 私たちの体の中にある大事な生きものの歴史を、ある意味では否定して、そうではない形で生きるのが人間の「賢い生き方」としてきたのです。 ウイルスと付き合いながら生きる方法を考えるとしたら、それは生きものの歴史を踏まえた生き方しかありません。 これまで述べてきた事柄をよく見つめ、「ウイルスを入れた生命誌」の中での生き方を考えていこう――新型コロナウイルスのパンデミックが教えてくれたことです。 ※本稿は、『ウイルスは「動く遺伝子」』(エクスナレッジ)の一部を再編集したものです。
中村桂子
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