大震災もコロナも乗り越えたのに「今がどん底」――資金繰り悪化で苦境、「イカ王子」の再出発 #知り続ける
2018年2月に繁華街で飲食店「居酒屋けんぼ」をオープンさせた新田健一さん(48)も、漁獲量の低下と価格の高騰が響いていると明かす。 「最近は赤字の月も増えてきたけど、そう簡単に値上げはできない。震災でこのまちは大きな傷を負った。漁獲量が低下している今だからこそ、価格を上げず、おいしさをどんどん知ってもらおうじゃないの、と。苦境の今だからこそ、地域に貢献したいんです」 この店では、仕入れ先の会社名がメニューに書いてある。店で食べておいしいと思ったら、同じものをその会社で買ってあげてほしいからだという。 「震災やコロナを経て、今のこの状況もみんなで協力し合って、頑張って乗り越えなければいけないと思っている。イカ王子なんて、その最高の例だった。津波で流されて、何もかもなくなったところに、あの姿で出てきて、『みんなでなんとかやっていこう』と新しい一本の道を引こうとしてきた。ポジティブな姿勢にみんなの心を温めてもらった。だから、今は逆に俺らが、みんなでなんとかしてやろうと。そんな気持ちです」
必ず“再起”してみせる
共和水産が民事再生法の適用を申請してからおよそ3カ月後の今年1月1日、石川県の能登半島で最大震度7の揺れを観測する地震が起きた。新鮮な海の幸が並ぶことで知られた輪島市の朝市は火災で壊滅状態に。東日本大震災を経験した東北の人たちも心を痛めながら、救助や復旧の様子を見守った。 実は、能登半島もイカと縁がある。能登半島の沖合では、イカ漁が盛んで、アオリイカやヤリイカなど季節ごとのイカが水揚げされる。共和水産の再建に奔走する鈴木さんも、能登半島地震については思うところがあるという。 「十分ではないにしても、僕たちは水産業のまちで復興の経験があるわけです。だから、宮古市が能登に何か提供できるものがあるはず。すでに、何人かの水産業者は支援・再建に動いていると聞いています。宮古市が復興できたんだから、能登の皆さんも絶対にできるはずです」