池田理代子、70年代にトランスジェンダーを描いた『クローディーヌ…!』誕生秘話
『ベルサイユのばら』『オルフェウスの窓』といった歴史大作ロマンを描きながら、社会問題を掬い取り、深い読後感を残す短編を数多発表してきた池田理代子先生。今回は、短編作品への思いや、脚本・演出・衣装デザインを担当された来年6月公演の舞台『女王卑弥呼』について、元マンガ誌編集者で、京都精華大学新世代マンガコース非常勤講師も務めるライターの山脇麻生さんが聞き手となってお話を伺います。〈yoi3周年スペシャルインタビュー〉 『ベルサイユのばら』『オルフェウスの窓』『クローディーヌ…!』池田理代子が生み出した作品たち(画像)
池田理代子先生が描く、“早すぎた”短編作品
――先生は多くの長編を手がけてこられましたが、『ベルばら』以前に、原爆症を題材にした『真理子』や、児童虐待を描いた『生きててよかった!』など、社会問題を扱った短編も数多描かれています。今回はそういった作品についても伺いたいと思っています。 池田先生:そういう作品も好きなんですけど、あまり日が当たらなくて。『ベルばら』ばっかりというのが残念なんです。 ――そうだったんですね。先生のデビューは1967年ですが、80年代に入ってからは読者年齢の高い雑誌でもお描きになってみたいということで、当時、各社から創刊されたレディースコミックにも作品発表の場を広げていらっしゃいますよね。短編『秋の華』は、男性の心理描写の解像度の高さに驚きました。 池田先生:確か、「YOU」が初めて出たときに描いた作品。未来の自分の姿を予見して(笑)。 ――はい。創刊号ですよね。同誌に描かれた女性の悲しさと気高さを描いた『ウェディング・ドレス』も印象に残っています。ウエディングドレス作りの仕事をしている30代の女性が主人公で、自分自身は憧れている結婚が叶わず寂しさを感じるものの、培ってきたキャリアに救われて自信を取り戻すというストーリーに、共感する読者は今でも多いのではと思います。 池田先生:私も割と好きなんですよ、そういう短編が。ふと読みたくなったときにたまたま手元になくて、以前、編集さんにコピーを送っていただいたぐらい。 『秋の華』story 観光地にある土産物屋の若旦那・大崎康彦のもとに、昔、恋焦がれていた年上の容子から、「久しぶりに会いたいので岬ホテルで待つ」と連絡が入る。逡巡していたタイミングで岬ホテルから土産物の注文が入り、康彦はホテルを訪れるが、バーのカウンターに座る容子の後ろ姿に時の流れを感じ、声をかけずにその場を去る。