転職先で「経理担当」で内定をもらったのに、入社後に「しばらくは営業をお願いしたい」と言われました。年収は「500万円」で通知書のとおりなのですが、こんなときどうすれば良いのでしょうか…?
会社が従業員を採用するときには、労働条件通知書で労働条件を明示しなければなりません。業務内容もその1つです。入社時に労働条件通知書と待遇が異なっていた場合には、救済措置が明確に定められています。募集時にも重要な労働条件の明示が義務付けられています。 最近の法改正で労働者保護の仕組みはさらに強化されています。実際の問題発生時の相談先・対応策も含めて解説します。 ▼早めに転職が決まったら「受給できる手当」を確認しよう!
業務の内容・就業の場所は、募集時にも正式採用時にも明示が必要
事業主は、募集時と採用時に、入社時に従事すべき業務、就業の場所(勤務地)を明示しなければなりません。2024年4月からは、入社後の業務範囲や勤務地などの変更の範囲も明示することが定められました。すなわち、配属先と異動の範囲の明記が義務付けられているのです(労働基準法第15条1項、労働基準法施行規則第5条)。 育児や介護などさまざまな事情で、勤務地や勤務時間等に制約のある人材がいます。また、高度専門的なキャリア形成が必要な職務なら、プロフェッショナルとしてキャリア展開していく働き方が望まれるでしょう。 勤務地、職務、勤務時間を限定した「多様な正社員」について、労使双方にとって望ましい形で普及を図る、という政府の方針によるものです。 これまでも、入社時の勤務地・業務内容については明示が必要でしたが、2024年4月以降は入社後の異動の範囲についても明示が必要とされたのです。モデル労働条件通知書の該当部分は図表1のとおりです。 図表1
厚生労働省 モデル労働条件通知書(抜粋)
労働条件付通知書と実際の労働条件が違う場合には即時退職も可能
労働条件通知書で明示された勤務地・業務内容と、実際に入社したときの勤務地・業務内容が異なっていた場合には、直ちに退職することもできます。 就業のために住居を変更していたなら、契約解除の日から14日以内に帰郷する場合、会社は帰郷旅費を負担する義務があります(労働基準法第15条3項)。 会社が労働条件の明示義務を怠ったり、会社が帰郷旅費を負担しなかったりした場合には罰則が科されます(労働基準法第120条)。