考察『光る君へ』33話 中宮女房ズメンバー紹介!道長(柄本佑)からまひろ(吉高由里子)に贈られた檜扇にはきらめく水辺で遊ぶ、あの日のふたりが…
かつての三郎が蘇る
日中の勤務で疲れて夜は筆が進まない、昼は周囲が気になって集中できない。 ついにまひろは「無理」となって筆を置く……一瞬映った筆置が御所車の形で、とっても可愛い! 里に帰って執筆したいというまひろの申し出。 「書きたい気持ちのときに書かねば物語は勢いを失います」 物語に限らず、全国の創作者が「ほんとそれ! 勢い大事!」となったのではないか。 しかしそれを却下する道長だが、 「内裏での様々なことを見聞きし、物語の糧にするとも申しておったっ!」 この「申しておったっ!」の言い方が、やや子どもっぽい。まひろと相対するときは一瞬でかつての三郎が蘇る。そして彼が里に帰るな、ここで書けという言葉には、藤壺に帝をお招きせねばならないからという理由が大前提としてあるのだが、その声と表情にまひろを手放したくない……傍に置いておきたいという男としての心を感じるのは気のせいか。 しかしここが非常に微妙なところなのだけれども、彰子の女房として勤め始めたまひろは道長と関係を復活させると召人となってしまうのではと……。召人は妾よりも更に不安定な立場。妻の一人ですらない、カウントされない存在なのだ。過去、妾になることを断ったのはまひろなのだが、この先ふたりの心がどうであれ、ソウルメイトが召人となっていいのかと……気が気でない。できればまひろにはもう触らないでね、道長。自らの意志で愛する人を公の場に出してしまった。もうかつての関係ではない。 この国を変える、それは道長にしかできない。お互いに己の使命を果たすのだということを六条の廃屋で誓った。自分の作品が本当に帝の心を捉えるのか……今は不安を抱えていても、まひろはこの国のために物語を書く。続きの執筆を約束してようやく内裏から下がることが許された。
私が好きなのは青
里に下がるご挨拶のために中宮・彰子のもとを訪れたまひろが目にしたのは、静かに空を眺める中宮……冬が好き、空の色が好き。私が好きなのは青。ここで初めて、彰子が自分の心の内を他の人に明かす台詞が出てくる。なぜまひろに、と思いこの場面を見返してみると、まひろはこう声をかけている。 「お寒くはございませんか?」「炭を持ってこさせましょう」 まず中宮を気遣い、いま佇む場所から動かなくても寒くないように計らおうとした。彰子自身の気持ちを尊重しての言葉に、少しだけ心を開いたのか。その直後に左衛門の内侍がやってきて、 「中宮様、こんなところでお風邪を引かれたらいかがなさいます(御簾を下ろさせて)さあ奥へ」 同じく寒いだろうからと気遣っているのだが、空が見えない場所へ移動させる。彰子からすると、まひろの気遣いの方が気持ちにそっているのだろうか。 しかし彰子は、左衛門の内侍の言葉を否定してしまうと彼女の立場がないと判断して逆らわないのかも……自分が好きなのは薄紅色ではなく青だということを皆の前で言わなかったのも同じ理由か。奥ゆかしいだけでなく、上に立つ者としての器があるように思える。32話で「お上はいかがあそばされたかと」と火事現場に残っていたことといい、自分のことよりも他者に考えが及ぶのは道長の血だろうか。 彰子のことを(興味深い……)と捉えたらしき、まひろの表情が印象的だった。
【関連記事】
- 考察『光る君へ』16話 『枕草子』づくしの華やかな宮廷サロンの影、都には「疫神が通るぞ」…極楽に清少納言、地獄に紫式部
- 考察『光る君へ』17話「あの歌で貴子と決めた」道隆(井浦新)が見失わなかった愛、まひろ(吉高由里子)は友への強い思いで筆をとる
- 考察『光る君へ』18話 道兼の死に涙するとは…玉置玲央に拍手を!まひろ(吉高由里子)は人気ないらしい道長(柄本佑)に「今、語る言葉は何もない」
- 考察『光る君へ』23話 宣孝(佐々木蔵之介)が越前に来た!ウニを匙で割ってご馳走する可愛いまひろ(吉高由里子)に「わしの妻になれ」ドンドコドン!
- 考察『光る君へ』30話 晴明(ユースケ・サンタマリア)「いま、あなたさまの御心に浮かんでいる人に会いに行かれませ」道長(柄本佑)動いた、ついに来るか「いづれの御時にか」!