考察『光る君へ』33話 中宮女房ズメンバー紹介!道長(柄本佑)からまひろ(吉高由里子)に贈られた檜扇にはきらめく水辺で遊ぶ、あの日のふたりが…
「雨夜の品定め」を読み聞かせてみた
質素ながらも和やかで賑やかな実家。 「追い出されたのでございますか!?」ではなく「追い出されたのでございますね!」と断定して叫ぶ、いと(信川清順)に笑ってしまった。そして8日間の取材旅行に「8日もご苦労なさったのでございますね」と涙ぐむ乙丸(矢部太郎)と、皆に聞こえないようにそっと「いじめられたの?」と聞いてくれる惟規(のぶのり/高杉真宙)の変わらぬ優しさにホッとする。 落ち着ける環境に戻り、ぐんぐんと筆が進むまひろ。ところで、紫式部は実際に彰子の後宮に出仕したのち、数日経ってすぐに里に戻ってしまったことが『紫式部集』から読み取れる。内裏ですこしだけ会話をした女房に、 閉ぢたりし岩間の氷うち解けば緒絶えの水も影見えじやは (うち解けにくい宮中の雰囲気が和らいでくれたら私も参内できるのではと思うのですが) という歌を送っている。その女房からの返事は、 深山辺の花吹きまがふ谷風に結びし水も解けざらめやは (中宮様の温かなお人柄によって宮中の氷のような空気も解けるのではないでしょうか) このやり取りから、どうやら職場に馴染めなかったことがうかがえるのだが、このドラマでは同僚たちからの爪はじきの雰囲気は控えめで、どちらかというと作家として「創作に集中できないから」が帰宅の主な理由となっていることが面白い。 執筆が捗ったまひろは、『源氏物語』第二帖「帚木」の「雨夜の品定め」の段が固まり、惟規といとに読み聞かせてみた。品定めとはつまり、どんな女がよいのかと若い男同士で経験談を交えて語り合っているのである。「下品な殿御たちのお話」とドン引きするいと、男たちの本音トーク展開に「面白い!」とウケる惟規。 実際ここは紫式部の観察眼と深い洞察力が発揮されており、大変面白いのだ。 惟規「おおぜいの男と睦んだわけでもないくせに、よく書けるね」 言い方が酷すぎて笑ったが、このドラマでの紫式部……まひろは2話で代筆屋という職業を通して多くの恋愛模様と機微をつぶさに観察し、創作のための引き出しの中で温めていた。 そしてここで、おっ? と思ったのが、中宮・彰子様はうつけだって皆が言ってるよと言う惟規に「うつけではありません! 奥ゆかしいだけ」と、まひろが柳眉を逆立てた場面。 中宮・定子(高畑充希)を清少納言は崇めて忠誠を捧げていたが、まひろの中宮・彰子への思いは、守らねば、支えてさしあげねばという使命感となるのではないだろうか。
【関連記事】
- 考察『光る君へ』16話 『枕草子』づくしの華やかな宮廷サロンの影、都には「疫神が通るぞ」…極楽に清少納言、地獄に紫式部
- 考察『光る君へ』17話「あの歌で貴子と決めた」道隆(井浦新)が見失わなかった愛、まひろ(吉高由里子)は友への強い思いで筆をとる
- 考察『光る君へ』18話 道兼の死に涙するとは…玉置玲央に拍手を!まひろ(吉高由里子)は人気ないらしい道長(柄本佑)に「今、語る言葉は何もない」
- 考察『光る君へ』23話 宣孝(佐々木蔵之介)が越前に来た!ウニを匙で割ってご馳走する可愛いまひろ(吉高由里子)に「わしの妻になれ」ドンドコドン!
- 考察『光る君へ』30話 晴明(ユースケ・サンタマリア)「いま、あなたさまの御心に浮かんでいる人に会いに行かれませ」道長(柄本佑)動いた、ついに来るか「いづれの御時にか」!