世界が注目する期待の大型新人! ローカルガストロノミーを進化させる新進気鋭のフレンチ・シェフの展望に迫る
本田直之グルメ密談―新時代のシェフたちが語る美食の未来図
食べロググルメ著名人として活躍し、グルメ情報に精通している本田直之さんが注目している「若手シェフ」にインタビューする連載。本田さん自身が店へ赴き、若手シェフの思いや展望を掘り下げていく。連載第8回は石川県小松市「Auberge eaufeu(オーベルジュ オーフ、以下『オーフ』)」の糸井 章太シェフ。日本最大級の若手料理人コンテスト「RED U-35 2018」で当時、最年少でグランプリを受賞し、レストランガイドブック「ゴ・エ・ミヨ 2023」で「期待の若手シェフ賞」を受賞。32歳ながら海外経験も豊富な新進気鋭のシェフが描く未来の展望とは?
糸井:両親は共に教師で、食の世界とは無縁でした。正月や盆に家族が集まるとき、祖母が少し贅沢なごはんを作ってくれて、それを食べてワイワイするのがすごく好きだったんです。その中心にあるのがおいしいごはん、それを作る料理人っていいなというのが自分の中にずっとありました。高校のときはバスケットをやっていて、卒業後もバスケットを続けるかどうしようかと考えたとき、自分は料理人になりたいなと思って。そこから食の世界に足を踏み入れました。辻調理師専門学校に入学して、学んでいるうちに一番やりたいなと思ったのがフレンチです。これからフレンチをやっていくなら、本場フランスを知らなければいけないと思って、辻調のフランス校に進みました。 本田:そのとき「Auberge de l'ill(オーベルジュドリル)」で研修をした。 糸井:はい。その後、帰国して、芦屋のレストラン「メゾン・ド・タカ芦屋(旧メゾン・ド・ジル芦屋)」に入りました。メゾン・ド・タカの高山英紀シェフが「ボキューズ・ドール」というコンクールに出場されたとき、僕が助手を務めて、その縁からです。そこに2年半ぐらい勤めて、もう一度フランスに戻って、ブルゴーニュの「Restaurant le greuze(レストラン・ル・グルーズ)」で修業しました。本当はそのまま残りたかったんですが、ちょうどフランスでテロがすごい流行った時期で、外国人のビザ取得が難しくなって、日本に戻ってきました。その年、2018年に「RED U-35」に出場したんです。 本田:そこでグランプリを取った。 糸井:そうです。「RED」の後は、北欧を訪れたときに印象深かった「Geranium(ゼラニウム)」で研修しようといろいろ進めていたんですが、コロナ禍になってしまって。どうしようかと悶々としているときに、「オーフ」のお話をいただきました。