常に試合に出ていたいコール・パーマー。イングランドの救世主となるか
文 田島 大 UEFA EURO初制覇を目指すイングランドは、いつになったらエンジンがかかるのか。 グループステージでは首位通過を決めたとはいえ、3試合の内容は褒められたものではない。わずか1失点で、被ゴール期待値は今大会最少の「1.42」と堅守を誇ったものの、攻撃面は3試合でわずかに1ゴールと不発。ゴール期待値も計「2.26」で、これは24チーム中3番目に低い数字だった。 普段のリーグ戦で見せているような動きを誰も発揮できていないチームにはテコ入れが必要だ。そこで6月30日のスロバキアとのラウンド16でイングランドの国民が期待するのは「誰よりも試合に出たがる青年」の先発出場だ。
プレミア→U-23と連続出場
「僕は試合があれば、いつだってプレーしたいんだ」と英紙『The Times』に語るように、MFコール・パーマー(22歳)はフットボールを愛してやまない。マンチェスター・シティに所属していた3年前には、プレミアリーグの試合に途中出場したあと、シャワーも浴びずに次の試合へと向かった。ユニフォームだけ脱いでジャージに着替え直すと、困惑するチームメイトに「下部チームの試合にも出る」と伝えて控え室を去ったという。もちろん、U-23チームの試合では無双状態。先発出場してハットトリックを達成した。 子どもの頃から類稀な才能を発揮していたパーマーは、6歳の時にリバプール、マンチェスター・ユナイテッド、シティといったイングランド北西部の強豪クラブから誘いを受けたそうだが、その時も優先したのは試合でプレーすることだった。ユナイテッドは練習参加、リバプールは控え組、シティは実際に試合に出られるという話をもらった彼は、大好きなユナイテッドではなく、金曜日の晩も試合を組んでくれるシティを選んだ。 16歳の時に放出されかけたそうだが、そこを乗り越えると気持ちを切り替えてハードワークに努めた。そしてシティのユースチームでゴールを量産するようになり、2020年にはユース世代のFAカップを制する活躍を見せ、年代別代表のレギュラーにも定着。シティでは18歳でトップチームデビューを果たしたが、ワールドクラスがそろうトップチームでポジションを奪うことは容易ではなかった。 昨夏、パーマーはU-21欧州選手権でイングランドを頂点に導くと、シティではFWリヤド・マフレズの退団も相まって出場機会が増え、セビージャとのUEFAスーパーカップでは同点ゴールを奪ってみせた。結果を出せるようになったことについて「昔から自信はあった。あとはリズムや試合勘が重要だったので、定期的に試合に出してもらえると助かるよ。僕はとにかくプレーしたいんだ」と明かした。そして、さらなる出場機会を求めて4200万ポンドでチェルシーに移籍することになった。