葛西臨海公園をアートが彩る。蜷川実花、落合陽一らの作品が集う「海とつながる。アートをめぐる」が開幕
海と深いつながりを持ってきた地域の歴史を反映
葛西臨海水族園・葛西臨海公園を舞台にしたアートイベント「海とつながる。アートをめぐる。― Harmony with Nature ―」が8月2日~18日まで開催される。 新領域株式会社ART +TECHの杉山央がプロデュースを務める本イベントは、長きにわたって海と深いつながりを持っていきた地域の歴史を受け継ぎ、広大な敷地の魅力を体感できるアートインスタレーションとして展開するもの。葛西臨海水族園では「海とつながる」をテーマにしたミストの演出、葛西臨海公園では「アートをめぐる」をテーマに、4組のアーティストによる作品展示を行う。
水族園のガラスドームをミストが包み込む
1989年に開園した葛西臨海水族園は、建築家・谷口吉生が設計を手がけた、ガラスドームが象徴的な建物。2028年3月にリニューアルオープンを予定しており、東京都は本館の保存・利用の検討やガラスドームへの愛着を表現するイベントなどを行う「ガラスドームプロジェクト」を実施している。 今回の演出はその一環で企画されたもので、15分に1回、左右から噴き出るミストがガラスドームを包み込む。杉山はミストに注目した理由として、「海や水を感じることができる内容にしたいということ、透明感のあるガラスでできた建築の美しさを際立たせるものにしたいということ」との2つの思いがあったと明かす。 水族園では8月11日~14日の期間に「Night of Wonder ~夜の不思議の水族園~」と題し、開園時間を3時間延長するイベントが実施される。この期間中はミストにもライティング効果が追加され、海に入り込むかのような世界観を生み出すという。
空とつながる、蜷川実花の過去最大級の新作
葛西臨海公園で開催されるアート展示には、蜷川実花 with EiM、平子雄一、落合陽一、河瀨直美の4組のアーティストが参加。かれらはいずれも、海、花、緑、光、建物など、公園の様々な要素との関係を受けて制作を行ったという。 蜷川実花の新作《Garden of Sky(空の庭園)》が展開されているクリスタルビューは、360度を見渡せる展望室から東京湾を一望できるガラス張りの建物。こちらも谷口吉生の設計によるものだが、蜷川たっての希望でこの場所での展示が実現したという。 「思春期の頃からすごく馴染みがあって、大好きな建物で、自分の生活の中にある大切な場所だったので、どうしてもここでやりたいとお願いした。この場所で建築の素晴らしさを生かしながら新しい表現ができないかなと思って作った新作」と本作に込めた思いを明かす。 ファサードを覆う作品は、自身の写真作品を再構成し、「自分の中にある桃源郷のような風景を表現した」もので、蜷川の作品としては過去最大の大きさの作品だという。ステンドグラスのように周囲の風景が透けて見え、「写真の空と実際の空が溶け合って一体化するような作り」(蜷川)になっている。 館内では、一つひとつ手作りで制作したという800個ものパーツをつなぎあわせたインスタレーションが展示されている。天井から吊るされたクリスタルやハート、蝶々、月などの形をしたパーツは、ガラス窓を通して入る太陽光を反射して輝き、瞬間ごとに違った表情を見せる。時間や天候による見え方の変化を楽しむことができる作品だ。 「クリスタルを通すことによって、室内にいながら自然のことをより感じられるきっかけになる作品になっているんじゃないかなと思っています。写真家なので、その瞬間を切り取って残したいと思ったり、瞬間瞬間で変わっていく事柄に対して敏感に反応しているところがあると思う。それを増幅させて感じられるような作りになっていると思いますので、変化を体感しにきていただけたら」(蜷川)