医師の仕事、看護師らに振り分け「働き方改革」…夜間対応・カルテ入力任せて残業減「有力な手段」
4月に始まった勤務医の残業時間を規制する「医師の働き方改革」で、医師の仕事を看護師らに振り分ける「タスクシフト」が成果を上げている。労働時間の削減につながる病院も出ており、専門家は「有力な手段」と指摘する。一方、受け手となる医療従事者は不足しており、人材の確保が課題になっている。(美根京子、中村直人) 【写真】勤務医だった兄を過労死で失った悲しみを語る遺族
重篤な救急患者を受け入れる3次救急病院の済生会福岡総合病院(福岡市中央区)。容体が急変して救命救急センターに運び込まれた入院患者の電子カルテを見ながら、3人の看護師がセンターの医師前谷和秀さん(48)に容体を説明した。
3人は、病院が働き方改革に対応するため、4月に設置した特定行為看護室のメンバーだ。研修を受けることで医師の指示なしで高度な医療行為ができる「特定看護師」8人が所属。病棟には属さずに院内を動き回り、気管チューブの位置調整や人工呼吸器の設定条件の変更といった医療行為の一部を担う。
前谷さんは医師が全ての患者の症状を把握はできないとしたうえで、「レントゲンの見方などが分かる特定看護師が説明してくれると、時間を有意義に使うことができる」と語る。
同病院は緊急の入院や手術が多く、残業時間が国の「過労死ライン」の月100時間を上回る医師が一定数存在した。2017年には違法な長時間労働で労働基準監督署から是正勧告を受け、本格的に労働時間の削減に取り組み始めた。
今年6月からは夜勤帯も同室メンバーがカバーするなど「タスクシフト」を加速。今年度の残業時間は月平均80時間超が2~3人、100時間超が1~2人に減少している。久保田徹副院長(62)は「転院搬送や夜間対応など医師だけでカバーし合っていたことを担ってくれている」と話す。
「病院に住んでいるような人もいた」
医師の事務作業を軽減させる取り組みも進む。重症患者らに24時間体制で対応する白十字病院(福岡市西区)では「医療クラーク」(医師事務作業補助者)約30人が診断書作成を補助したり、電子カルテを代行入力したりしている。