医師の仕事、看護師らに振り分け「働き方改革」…夜間対応・カルテ入力任せて残業減「有力な手段」
働き方改革を担当する医師は「病院に住んでいるような人もいた」とかつての労働環境を振り返るが、昨年度に残業時間が年960時間を超えたのは1人だけで、今年度はゼロになる見通しだ。渕野泰秀病院長(65)は「手術や外来後に夜中までかかっていた書類作成などを医療クラークに代行してもらえるので負担が減っている」と語る。
国も今年度の診療報酬改定で医療クラークを配置した場合の加算を拡充するなど後押しする。全国医学部長病院長会議が5月に82大学の医師を対象に行った調査では、週平均の労働時間が50時間未満の医師が22年7月の41・5%から49・6%に増加。タスクシフトなどの取り組みで労働時間の減少が進んできていると指摘した。
看護師の業務もシフト必要
課題はタスクを受ける医療従事者の確保だ。
厚生労働省は来年、全国で最大27万人の看護職員が不足すると推計。23年度の有効求人倍率は、全職種平均が1・29倍だったのに対し、看護師は2・31倍と高水準だった。食事の配膳やベッドのシーツ交換など、看護師をサポートする看護補助者(看護助手)の需要も高く、有効求人倍率は4・13倍で看護師を上回った。
福岡県は、看護補助者として働きたい人を、県の負担で医療機関に最長半年間、派遣する事業に取り組む。その後の雇用を図るのが狙いで、県医師・看護職員確保対策室の枝光みゆき係長は「看護師の業務もシフトする必要がある」と話す。
医師の働き方改革に詳しい岩本幸英・九州大名誉教授(整形外科)は「タスクシフトは医師の労働時間短縮の有力な手段だが、医療の質と安全性を担保するには、タスクを受ける側の医療従事者に人員的な余裕や技術・知識が必要となる。さらなる推進には、医療機関への公的な財政支援が求められる」としている。
生成AIで後押しも
医師の働き方改革を、先端技術で後押ししようという動きも出ている。熊本大学と九州電力の子会社「Qsol」(福岡市)は9月、生成AI(人工知能)を活用し、文書作成など医師の業務を補助する技術の共同研究に乗り出した。